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展示物の名称
猛火から蘇った樹
出展者
茅野 宏美



東京都墨田区の茅野です。私の住む家の近くに飛木稲荷という神社があるんですが、この境内にある大きなイチョウの樹が町内の自慢なんです。でも、古いからとか高いからとかいうんじゃないんですよ。何が自慢かというと、その生命力。何と言っても戦災で一度黒こげになった樹が、また青々とした葉を吹き出して蘇ったんですから。まるでゾンビみたい、というと怒られるかしら…。
 祖父の話では、下町一帯を襲った昭和20年3月10日の東京大空襲で、この辺りは一面の焼け野原になったそうなんです。一晩で8万人以上の人が亡くなったっていうから残酷ですよね。そのとき、神社のイチョウの樹も大部分が黒こげになったとか。かわいそうに、この樹もこれで枯れちゃったな、ってみんな思ったみたい。それがいつの頃からか、少しずつまた芽を出して…。イチョウが青い葉を繁らすようになったときには、祖父もほんとうに嬉しかったそうです。戦争には負けたけど、この樹と一緒にまた町を復興させよう、ってみんなと誓い合ったとか。
 いまでもそのときの黒い焼けこげの痕がしっかり残ってて痛々しいけど、今年も青い葉がこんなに繁りました。樹木の生命力って本当に不思議ですよね。今年のお祭りも無事に終わって、葉の色が黄色くなるのももうじきです。やっぱりこのイチョウは、町内の自慢の一品でしょう。

いやはや、これはオドロキ。よくここまで生き返りましたね。この生命力、見習いたいものです。もっとも私の周りには、殺しても死なない人間がごろごろいますが…。