◆かつての宿場町の名残なのか、せまい通りには数軒の古びた旅籠が、いまも残って営業を続けている。この三島屋は、中でも風情のある建物の一つ。軒下の看板の文字が読めないほど、年季が入っている。ちょっと泊まってみたい気もするが、一泊いくら程度なのだろう?
五月の日差しはちりちりと強く、古びた土蔵の白壁がやけに眩しい。足助川で魚を釣るオヤジの白いシャツの背中も、びっしょりと汗に濡れているようだ。ここはもう、すでに初夏。
これからどこへ行こうか…。呟いてはみたものの家並みはやがて尽き、あとは無人の細い道が続くばかり。道を尋ねる人影も見つからず、結局、来たときと同じガラガラのバスで、黙って山を下りるしかなかった。 |