◆広い庭、うっそうとした巨木。黒板塀に囲われた表町の古い屋敷はどれも、寡黙な北国の武士のように凛として立っていた。そして生きていた。ここはいまも、人の住む生活の場なのだ。電柱も看板もない。研ぎ澄まされた日本刀の刃のような時間が、ゆっくりと静かに流れるまち。角館は間違いなく、現代の日本でもっとも優美な家並みを持っている。
惜しいことに武家屋敷通りの枝垂れ桜は、すでに盛りを終えていた。その代わり、桧木内川堤の桜並木はちょうど満開。やったね!だ。流れに沿って湾曲した土手の上を、ピンク色の雲が延々と続く。まさに絶景だが、花見客の姿が今ひとつ少ないのはなぜだろう?
3時54分発の盛岡行き特急に乗るため、角館駅に戻ってくると、狭い改札は下校の高校生で溢れていた。青臭い東北弁が、ひしめき合い行き交う。こんな所でナマの東北弁をがやがや聞くと、やはり「遠くへ来たもんだ」と言う感じがする。なんたって、本物の東北弁なんだもの! |