◆「福助ミシン」の琺瑯看板も懐かしいタカゲン商店。何を売る店なのだろう。つし二階、塗籠壁、虫籠窓にバッタリ(縁台)と、江戸期の商家の特徴を備えた建物だ。この辺りは平入りと妻入りの家々が混在し、変化に富んだ景観を形作っている。こういう町を歩くのは楽しい。
下の町から中の町そして上の町と、旧若狭街道沿いに約1.5kmに渡って続く熊川宿を歩き終えたのは、午後1時頃。山に囲まれたかつての宿場は、いまはすれ違う人もない静かな田舎町だった。それにしても、美しい遠景の山々、清冽な水の流れる水路、そして緩やかにうねる旧街道、と町を形成する環境はどれも素晴らしい。こんな奇跡的とも言えるほど条件の揃った、熊川の伝統的な家並みを後世に伝えるのは、きっと現代人に課せられた使命なのだろう。
この後、とろろ飯の昼食を慌ただしくすませ、1時15分頃の今津行きのバスに飛び乗る。今津からは湖西線で京都へ。青々とした琵琶湖を左手に見ながら南下する湖西線の車窓は、この旅の終わりを飾るに相応しい美しさだった。 |