◆北関東の青い空に、古びた土蔵の陰はよく似合う。それはまた、この街の土蔵が大火との闘いの末に生まれた、という証でもある。どんな歴史が、そしてどんな人の声が、その中にしまい込まれているのか…。傾き掛けた晩秋の日差しの中で、開け放たれた二つの窓が、まるで巨人の両眼のようにじっと虚空を見つめていた。
帰りがけ、“油屋傳兵衛”という暖簾の掛かった店に入り、名物のこんにゃく田楽を食べる。隣接するのは味噌工場。たっぷりと味噌の乗った大きなこんにゃくは、冷えた体に温かく旨かった。ふと見ると、店の壁にはなぜか森昌子の写真が。そうか、そう言えば彼女もこの県の産だったよな…。噛み砕いたこんにゃくを呑み込みながら、やっとそれに気が付いた。 |