No.9(2003年5月6日)
山口嘉民:文
●折にふれ、作者の近況や心境などをお知らせします。


4月の聖武連(しょうむれ)山

石井鶴三先生は、痩せても太っても人間の骨格はかわらない、と言っていたそうだ。
4月から5月には新緑が山をおおい、まるで着膨れた人みたいになるが、山の骨格を忘れなければ、いずれ丸々とした春の山を描くことも出来るだろう。
そういえば、鶴三先生は大の相撲好きだったらしく、力士の絵を沢山描いたようだ。
笹村草花人作[山口民蔵氏]  
ブロンズ/昭和21年/46.1cm


私の祖父の肖像彫刻だが、笹村先生が塑像を制作中、鶴三先生が見に来て、これで笹村草花人の彫刻に芯棒が通った、と言ったそうだ。

作者も当人もいなくなったいま、骨組と内面描写に優れた作品だが、当時、祖父は自らが恰幅がいいと自負していたらしく、幾ばくか納得のいかないものがあったらしい。

旧墓地

樹間の村
旧墓地

村の旧墓地は、山間に点在している。そこから描く事は不思議に気持ちが落ち着く。
先祖に守られているという空間感は、僕にとって確信のようなものだったからだろう。

墓地には 眺めのいい場所を選んでいるだろうし、そこから見えるものを描くとき、過去の村を想像したりもする。
三角点

山間の集落は山を背にして点在し、陽の当たる所は畑になっている。
村の背から尾根まで登ると、測量学校の実習用の三角点がある。
三角点からの眺めは我が町のパノラマだが、生活は点となって、暮らしも人も見えなくなる。

何度登ってみても、身の丈にあっていないような気がして、まだここからは描けないな、と思う。

測量学校三角点

三角点からの我が町



前に戻る