その21.ゴジラの心は深い海(2000.5.26)

近頃、わしもなかなか映画を見る暇がなくて困っておるが、たまに行く映画館のあの暗い空間は、やっぱり胸がどきどきする匂いを持っているな。そこに冷えた飲み物なんぞがあれば、さらに言うことなし。上映中に隣の席でポテトチップスの袋などを、おばさんにバリバリやられるのははた迷惑じゃがね、うん。
しかし、最近は日本人の国際スターもなかなか活躍しておる。工藤夕貴ちゃんなんかは英語もペラペラで今後が楽しみだし、御大千葉真一もシブーく頑張ってるな。昔は早川雪洲がハリウッドでスターになったものだし、ご存知、素浪人三船敏郎は国際スターの代名詞じゃった。おっと客人、もう一人大事なお方を忘れておったよ。いまも世界にその名をとどろかす、日本が生んだ戦後最大のスター・・・。もう分かったろう。そう、あのゴジラじゃ。アメリカでは“GODZILLA”の名前で知られておる。何と言っても、 GOD(神)のZILLAじゃ。意味は良く分からんがな。
ゴジラが初めてスクリーンに登場したのは、昭和29年(1954)のこと。まだ日本が戦後の復興に向け、走り始める前の時代じゃった。いやー、あの大戸島の山の尾根からゴジラが初めて姿を現したシーンは、いまでも目に焼き付いておるよ。すごい衝撃だったもんなあ。映画は空前の大ヒットじゃった。中でも印象的なのは、志村喬扮する古生物学の山根博士の次のセリフ。
「今からおよそ200万年前・・・(ゴジラは)海棲爬虫類から陸上獣類に進化する過程にあった、中間型の生物」
恐竜が初めて地上に現れたのは、2億1000万年前の三畳紀。絶滅したのは、6500万年前の白亜紀末のことじゃった。じゃあ、ゴジラが生きた200万年前と言うのは、作者の間違い? いやいや、そこにゴジラに託された深いメッセージがあったのじゃよ。実は200万年前と言うのは、人類の祖先アウストラロピテクスが生まれた時代なのじゃ。つまり、ゴジラとは人類の姿を重ねた生物のこと。作者は人間を写す鏡として、ゴジラを登場させたわけだね。ここが、そのあたりの安っぽい怪獣ものとは違う、深いふかーい映画だという所以じゃね、おっほん。
ちなみに、アメリカでゴジラが公開されたのは、昭和31年(1956)。これは、アメリカの通信員が帰国途中に立ち寄った日本で、ゴジラに遭遇するという設定の再編版で、あちらでも大ヒットしたんじゃ。主人公の通信員に扮したのは、なんと鬼警部アイアンサイドのレイモンド・バー。この海外版は、翌年「怪獣王ゴジラ」として日本に逆上陸もしたんだよ。
近年、アメリカ製のゴジラが公開されたりしたが、あれはひどかった。ただのトカゲじゃね。アメリカのマニアも、みんなそう言っていたな。だいたい、ゴジラがあんな簡単にやられるかい。ゴジラの本当の心(?)が分かるのは、やはり日本人だけ。なに、今年は三冠王を狙う? キミねえ、それは巨人のゴジラ!