その112.日本が永遠に野球の国なわけ(2006.5.6)
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◆来た〜! いよいよサッカーの、ドイツW杯が近付いてきたね。今年の正月からわしなんかもう、嬉しくて晩酌の箸を持つ手が震えるくらい待ちこがれた世界的大イベントが、ついにそこまでやって来たね。なに、箸が震えるのは別の原因だろうって? ふん、キミなんかにこの歓びは分かりはせんよ。とにかくだ、もうすぐ始まるんじゃよ、あの“魂の燃える日々”がさ。
ところがなぜか、前回2002年の日韓共催の大会前に比べると、なんか今回はマスコミの盛り上がりがいまひとつって気もしないではないわな。新聞のスポーツ面を開いても、デカデカとカラー写真いっぱいに目に飛び込んでくるのは、野球の記事ばかり。日本のプロ野球にアメリカ大リーグのニュースが連日、これでもかと言わんばかりに紙面を独占しておる。サッカー関連の記事は週末を除いて、片隅に遠慮がちに載せてあるばかりだもんなあ。やっぱりこの国ではマスコミ的には、何が何でもまず野球なんだろうね。
◆実はわし昨年から、今年の日本の新聞・テレビがこうした野球記事に力を入れるだろうことは、ある程度予想しておったんじゃ。なんといってもワールドカップ・イヤーの今年は、野球界にとっては危機感を覚える年でもある。「日本野球衰退の危機」を訴える記事や論調が、今年初めからポツポツ目についてはおったんじゃ。むろん、あからさまにサッカーを敵視した物言いではない。じゃがサッカーの興隆により、結果として野球がいまにも日本から衰亡してしまうかのようなきな臭い空気を、新聞・テレビ界は共同歩調をとって煽ってきたようにも見えるな。実際は日本の野球界は、ちっとも衰退していないのにさ。
ま、彼らの危機感も分からないではない。キミも知ってると思うが、知らないうっかり者のために整理をすると、長年日本の野球界を主導的に運営し主催してきたのは、この国の新聞・テレビ業界だよね。例えばプロ野球の読売ジャイアンツの親会社は読売新聞グループで、中日ドラゴンズは中日新聞社、ヤクルトスワローズもかつてはフジサンケイグループのものじゃったし、いまでも20%の株を同グループで保有しておる。さらには横浜ベイスターズの親会社が放送のTBSときては、セントラルリーグってのはほとんどの球団が新聞・テレビ業界の持ち物ってことになるな。おまけに、年2回もある高校野球の全国選手権のうち、春の選抜の主催は毎日新聞社で、夏の大会の主催は朝日新聞社だから、メジャーの新聞で野球と関わってないところはない、といっても過言でないんじゃないの。
◆え、何のためにそうなのかって? 決まっておる。新聞の販売部数を増やし、テレビの視聴率をアップさせるため、つまり商売のためなんじゃ。野球人気が上がれば上がるほど自社の名前は有名になり、それが抜群の宣伝効果を生み、広告収入が入るという仕掛けさ。なんたって自分たちの紙面や放送網の他に、公共放送のNHKさえ連日ニュースで大きく名前を連呼してくれる上、ときには試合の全国中継までやってくれる。会社の認知度をあげるのに、これほど強力な武器もないってもんさ。いわば日本の新聞・テレビ業界は、野球利権の競争者かつ共有者というわけなんじゃよ。
こうした構図は、高校野球の主催で部数を伸ばしていた朝日・毎日新聞に対抗するため、読売新聞の正力松太郎が昭和6年に米大リーグ選抜チームを招聘し、日本のチームと対戦させた辺りから始まったのかも知れないね。かくして、昭和11年には読売や名古屋新聞(現中日新聞)などが中心となって、日本のプロ野球がスタートしたんじゃ。思えば新聞と野球のつながりは、長く深いものがある。以来、いろんな紆余曲折があったものの、わが国のプロ野球と高校野球は、新聞社の拡販競争とともに大きく発展してきたんじゃ。やがてそこに、系列局のテレビの視聴率争いが加わって行く。分かるじゃろう? こうした洪水のような野球報道により、戦後日本のスポーツシーンは野球一色に染まっていったというわけさ。わしが小学生の頃なんぞ、男の子の弁当箱のふたといえば、必ずといって野球選手の絵が描かれておったもんじゃよ。
◆ま、思えばわしも子供の頃はご多分に漏れず野球少年だったし、大人になってからもずいぶん楽しませて貰った。じゃがなあ、振り返ってみればこうした野球偏重の報道姿勢は、ずいぶん他のスポーツの発展を阻害してきたんじゃないのかい。良い例がサッカーで、この世界的スポーツもわが国ではつい十数年前までは超マイナースポーツだったし、世界が熱狂するW杯の存在もほとんどの日本人には知られてなかった。野球人気を脅かすスポーツの興隆を、この国の新聞・テレビ業界は心底望んでいなかったというわけさ。つまり、野球人気が衰退していちばん困るのは、彼らなんじゃよ。
断言してもいいが、この新聞・テレビ業界と野球界の関係が続く限り、日本のナンバーワンスポーツは永遠に野球なんじゃ。圧倒的な露出の多さには、いかにロナウジーニョのドリブルも太刀打ちできはせんて。しかし、そこには大きな問題も控えておる。なんたって新聞・テレビ業界の特徴は、人の批判は得意だが自己批判は大嫌いだってこと。政治や経済の構造改革には遠慮なく注文をつける彼らも、野球界の構造改革にはまったく口をつぐんだままじゃ。なぜならそこには、アンタッチャブルの大きな利権が存在しているからな。だからプロも高校も、野球界はいつまでも古い体質を引きずったまま、なあなあで引き継がれて行くというわけさ。でもこれって、他人の悪口は大得意じゃが人に悪口を言われるのは大嫌いという、キミの近所のオバサンにそっくりだとは思わんかね? もう少し大人になってくれんかな、日本の新聞・テレビ屋さん。
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