その115.この夏、いちばん騒々しい海(2006.8.30)
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◆しかし、今年の夏はまたいちだんとクソ暑いね。あんまり暑いんでわし、この日記の更新をついつい忘れておったよ。なに、どうせ誰も読んじゃいないから気にするな…? そうバシッといいなさんなよ、キミ。わしだって軽井沢辺りに別荘でもあれば、そこでせっせと執筆活動に勤しんで、名文の一つも書き上げたい意欲はあるんだよ。まあ生憎、そんなものがないからこの狭い館長室で今日も一人、安いアイス最中をモソモソとかじってるんじゃないか。分かって頂戴っつ〜の!
じゃが、この夏の暑さをさらにエスカレートさせてくれたのが、新聞やテレビのニュースだったね。中でも小泉総理の靖国神社参拝と甲子園球場の高校野球の報道は、これでもかと言わんばかりのヒートアップぶりじゃった。まあ新聞もテレビも売上げや視聴率を伸ばすためには、どでかい事件がぜひとも欲しいところじゃろうから、気持ちは分からんでもない。でもなあ、この二つに関する頭に血が上ったような取り上げ方は、冷静に考えれば尋常じゃあないよ。本来、そっとしておけば静かな夏でいられるものを、マスコミがよってたかって意図的に大事件にしてしまう代表が、この二つの事例じゃあないのかい。ヘソ曲がりのわしには、そう見えるんじゃがね。
◆中でも驚いたのが、高校野球の新聞報道じゃ。今年の大会が盛り上がったのはいいが、わしが購読している一般紙のスポーツ面では連日のトップ扱い。決勝戦やその翌日の再試合の記事にいたっては、サッカーのW杯で日本がブラジルを破って優勝してもここまではないだろうと思うほど、巨大な見出しとカラー写真がデカデカと並んでおった。プロ野球の記事も、これにはすっかり形無しじゃ。あれにはわしもたまげたよ。
日本の新聞各社が、野球産業の出資者であり旗振り役だという裏事情はわかる。じゃがなあ、冷静に考えてもごらんよ。甲子園の高校野球といっても、所詮は高校生の部活の大会じゃないか。クソ暑い中、一生懸命やってる生徒たちもえらいとは思うが、はっきり言ってこれは騒ぎ過ぎだって〜の。だいいち、彼らの汗と涙の感動ドラマを称えたいのなら、ほぼ同じ時期に行われる高校総体については、ほとんど無視に近い扱いなのは何故なんじゃろうな。野球以外にもわが国の高校スポーツには、サッカーもあればラグビーもテニスもある。それぞれには、それぞれのドラマもあるはずじゃね。これではえこ贔屓といわれても、仕方がないよ。
◆おまけに高校野球は、大きな声では語られないが、多くの問題を抱えておる。まず何といってもその一番は、選手の健康管理の問題じゃ。今年の大会で優勝した早稲田実業の斎藤投手の場合、1回戦から決勝戦の再試合まで7試合すべてに登板して投げた球数がなんと948球。連投に継ぐ連投で、1試合の平均球数が135球だから驚くね。“ハンカチ王子”なんて、昔の少女マンがみたいな名前を付けられて喜んでる場合じゃないよ。準優勝した駒大苫小牧の田中投手の場合も、6試合に742球を投げて1試合平均が123球。はっきり言って二人とも投げ過ぎで、これじゃあ肩や肘を壊さない方がおかしいよ。
だいたい、肉体がまだ成長過程の高校生にこんな無茶をさせる監督も監督じゃが、それを見て見ぬふりをする主催の高野連や新聞社の連中は、いったいどんな神経をしているのかね。テレビのアナウンサーも美辞麗句を並べ立てる前に、こんな前近代的なやり方をもっと批判したらいいんじゃよ。え、それを言ったらクビになる? だからさ、そこが問題だってえの。
◆もう一つの問題は、この大会のウソ臭さをもっと如実に顕わしておる。それは野球留学の過熱ぶりじゃよ。「全国高校野球選手権」と銘打つこの大会は本来、各県予選を勝ち抜いた俊英たちが一ヶ所に集まって、郷土の代表として優勝旗を争うところに大きな意義があるはずじゃった。だからこそ、地方のオジチャンオバチャンたちもねじり鉢巻きで、必死におらが町の高校を応援してきたわけじゃ。しかし現実はそうではない。早い話が、もはや多くの高校の選手たちが地元の人間ではないってことさ。
高野連の調査(05年)によると、過去10年間の春夏甲子園出場校の全メンバーのうち、地元以外の都道府県出身者でいちばん多かったのが、ダントツで大阪府の676人。ついで兵庫県の96人、3位に神奈川県の90人と続き、以下、4位奈良県64人に5位京都府50人だから、5位以内を見るとなんと関西の府県が4つを占めておる。一方で彼らの受け入れ先としては、1位高知県の164人を筆頭に2位には青森・山形両県が118人で並び、以下、4位香川県112人に5位宮城県88人が続く。つまり大まかに言ってしまえば、“野球の本場”関西出身の中学生が甲子園への出場機会を求めて、層の薄い東北や四国などの高校に進学するという構図が、何となく見えてくるってわけ。
むろん彼らの目標は甲子園で活躍して、プロ野球に高額でスカウトされることじゃろうし、片方で受け入れる私立校側も、甲子園は校名をアピールする最高の舞台だから、商売的なメリットは計り知れない。汗と涙の高校野球の裏で行われているのは、こうしたリアルなソロバン勘定だということも忘れちゃいけないね。最近は東北勢も強くなったなァ、なんて感動してる場合じゃないっての、キミ。わしは思うんじゃが、どうせ騒ぐんだったら、こうした薄汚い勧誘の実態なんかについても、もっとパアッと騒いでくれんかな。ネ、日本の新聞屋さん!
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