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その118.どこに消えた、ドラゴンのゴール?(2007.3.9)
しかし今年の暖冬は異常をとおり越して、不気味といってもいいほどの様相じゃな。つい先日も近くの梅の名所に花見に行ったところ、なんととっくに花の盛りは終わっておった。去年の同じ時期には満開の花を堪能したもんじゃったから、これにはビックリ。露店で焼鳥やビールを売ってた連中もヒマそうだったけど、これじゃウグイスもいつ鳴いていいやら困っておることじゃろうて。
そんな中、今年もいよいよサッカーシーズンの到来だよ。15年目を迎えたJリーグ開幕じゃが、特に埼玉スタジアムの浦和レッズ対横浜FCの一戦で、横浜のFW・久保が見せた驚異的なゴールには、さすがのわしも度肝を抜かれたね。なんたって30メートル以上もある距離から、相手DFも予想外のロングシュート。これが浦和ゴール右隅に弾丸のように突き刺さったから、実況していたNHKのアナウンサーも開いた口が塞がらなかったな。当然、翌日のスポーツ新聞の一面はこれかと思っていたら、なんとそこには米大リーグに移籍した松坂の練習中の写真が軒並み…。今度は、わしの開いた口が塞がらなかったね。昔から野球を商売道具にしてきた日本の新聞屋さんたちだから無理もないが、こんな紙面作りをしていては、どこかおかしいんじゃないのと言われてもしょうがないんじゃないかい。

そういや、“野球衰退の危機”とかいう言説が声高に叫ばれ出してから、こうした野球に関する報道はいっそう増えたような気がするね。なんかもう新聞もテレビも、狂ったように煽りまくっておる。例えば米大リーグに移籍した日本人選手のちょっとした言動から、プロ野球チームののんびりキャンプ情報に、大学の練習に参加したハンカチ王子の一挙手一投足に至るまで、もうどうでもいいような情報のオンパレード。そうそう、五輪予選はずいぶん先だってえのに、星野ジャパンの大特集ってのもあったな。
 空騒ぎとはまさにこのことじゃよ。それはまるで、野球がこの国の国民的スポーツだから報道するんじゃなくて、報道によって野球をなんとか国民的スポーツとして盛り上げたいという、彼ら自身の主張のようにも聞こえるな。新聞・テレビのスポーツニュースは昨今、NHKも含め、こうした情報でほとんど埋め尽くされておる。結果として、野球以外のスポーツを愛する人間たちは、我慢を強いられるってわけ。ウィンタースポーツのファンや選手たちなんか、いまが盛りだってのに可哀想なもんじゃよ。

でも、お節介のようじゃがこんな状況をいつまでも続けていたら、かえって野球嫌いを増やしてしまうことになりはせんかな。うん、なるなる、なります、なるってば! 良い例がこのわしでな、子供の時分からプロ野球ファンだった筋金入りも、改革とは無縁な野球業界の腐った体質と、異常なまでのマスコミの偏重報道に、いつからか嫌気がさして、いまではすっかりアンチ野球派。日本代表とサガン鳥栖をこよなく愛する、サッカー一途のオヤジに変身しましたってわけさ。どうこれ?
 これは何もわしに限ったことではない。わしの古い友人たちの中にもいまでは野球に見切りを付け、隠れサッカーファンに転身した連中が何人もいるなあ。さすがに、スタジアムのゴール裏に立つところまでは行っとらんけどな。だから、野球ファン=年輩者でサッカーファン=若者という、単純な図式を描くのはあんまり正しくないんじゃないのかい。要は面白くて、自分が素直に感情移入できるスポーツなら、何でも良いんじゃよ。ちなみに外国のサッカースタジアムは、オヤジと若者が渾然一体となって盛り上がっておる。あれっていい雰囲気だよな〜!

いっとくが、わしがアンチ野球派になったのは、野球そのものを嫌いになったからじゃあない。スピード感こそないが、のんびりスタンドでビールでも飲みながら友人たちと世間話を交わし、ときたま打球の飛んだ方向を確認してはゲームを楽しみ、そしてまたビールを喉に…。そんな緩やかな時間が流れる野球場の雰囲気には、また捨てがたい独特の味がある。いつかまた、わしが野球に回帰するときが来んとも限らん。じゃがなあ、それはいったいいつになることやら──。
 新聞・テレビ業界の常軌を逸した煽り報道、企業の宣伝道具としてのプロ野球、選手たちの異常なまでの高額年俸、米大リーグに蚕食されつつある日本野球とそのお先棒を担ぐNHK、そしてただの部活なのに美辞麗句で飾り立てられる高校野球、などなど…。冷静に考えれば、誰がどうみても正常ではない状況が、この国の野球界を包み込んでおる。わしがアンチ野球派なのは、こうした嘘で塗り固めたような構造が透けて見え始め、素直に野球を楽しめなくなったからじゃ。本来ならこういう問題を批判し追求するのはマスコミの仕事なんじゃが、なにせ野球ビジネスの推進役が彼ら自身なんでそれは無理。
 かくして、グランドデザインが明確で、地域密着のクラブというコンセプトが気に入ったJリーグを、わしは選んだというわけ。何より90分間息もつかせぬサッカーは、野球よりはるかにスペクタクルで面白いもんな。だからいつかそのうち一社くらい、野球偏重報道の異常さに気が付いて、まともな情報を流してくれる新聞・テレビ屋さんが現れないかと、わしは待っておるんじゃよ。は〜るよ来い、は〜やく来いってわけさ。なっ、キミもそうじゃろう?