その120.2007年サッカー合戦図屏風(2007.5.22)
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◆暑くなったね。ちょっと外を歩くともう汗ばんで来て、シャツやパンツが体にピタッとへばり付くね。そんなときわしら親父族は、初夏の訪れを感じるんだよな。ああ、夏はきぬ…なんてね。え、のっけから気持ちの悪い話題はやめろ? はいはい、失礼いたしやした。しかし、このところマスコミを賑わしているのが、サッカーくじのBIG。ついに先日は、6億円近い当たりくじが7口も出て、騒々しいのなんの。じゃが笑ったのは、それまでサッカーくじに見向きもしなかった連中が、6億円が当たるかも知れないと聞いたとたん、にわかに窓口に行列を作るようになったこと。人間とはまさに現金なものじゃが、並んだオジサン・オバサンもお金だけではなく、サッカー観戦を楽しむ心の余裕をどこかに持って欲しいもんじゃな。
そういやこの前、関西の某テレビタレントが、サッカー人気は一部の若者だけのものと言うておった。これは事実誤認だとわしは思うし、相手が関西人だから仕方がない面もあるが、しかし一方で野球一色で育ってきた中高年には、どこか馴染みにくい部分があるのも事実かも知れんわね。なんたってサッカーには、分かりにくい外来語が多すぎる。ツートップやサイドバックはまだしも、バイタルエリアにアジリティ、マッチアップにボランチときては、脳ミソの硬くなった年配者にはすんなり受け入れ難い。面白さからいえば将棋にも似た陣形のサッカーは、日本人のDNAにピッタリ合っているはずなのに、言葉の問題で壁があるとするなら、改めなけりゃいかんのじゃないかい。
◆そこで参考になるのが、野球じゃね。アメリカの国内スポーツ「ベースボール」に、日本人は「野球」という和名を与え、その用語も様々に翻訳・意訳して、みごと日本化することに成功しておる。長い歴史もあり、たとえば「降板」や「続投」など、現代社会で一般化した言葉も多いな。むろん降板はピッチャーが交代してピッチングプレートを降りることだし、続投は交代しないで投げ続けること。いまでは降板=更迭、続投=留任の意味で広く使われておる。しかし、サッカーの監督にも「降板」させたり「続投」させたりするから、日本の新聞屋さんもやり過ぎだよな。
ま、それはともかく、難しいサッカー用語の言い換えは専門家に任せるとして、歴史好きのわしとしては少なくとも、フォーメーション(陣形)くらいはそれに相応しい日本語を考えてみたいね。例えばツートップなんか、「双龍の陣」といえばいかにも双頭の龍が獲物を狙っているようで、格好良くないかい。またスリートップなら「魚鱗の陣」なんてのも良いだろうし、ワントップなら「孤鋒の陣」ってのはどうかな。なんだか三国志を読んでるみたいで、心臓がドキドキするじゃないか。なに、一人で勝手に熱くなるな? うん、ときどきよくそう言われるんだけどさ、まあ最後まで付き合ってよ。
◆つぎに中盤じゃが、まず4−4−2の場合は4人の並び方で陣形が異なるな。ボランチ2人にサイド2人の場合は「ボックス型」と呼ばれるから、これはそのまま「方形の陣」といえば伝わり易い。また、トップ下1人とサイド2人にボランチ1人の「ダイヤモンド型」の場合は、「菱形の陣」と呼ぶ方がお爺ちゃんには理解し易いはず。とにかく、お年寄りにもイメージを伝えることが大事なのよ。
難しいのが中盤5人の場合じゃね。これには日本代表が得意にしていた3−5−2や、スペインのクラブがよく用いる4−5−1の場合などがあるが、だいたいボランチ2人の前に3人の攻撃的MFを配置するのが一般的。前の3人の真ん中がトップ下になって、5人は蝶が羽を広げたようなWの字型になる。そこでこれを「胡蝶の陣」と呼ぶ。え、スリーボランチだったらどうするかって? そうじゃな、これだとM字型になるから「インリンの陣」…てのは冗談で、その形から「双嶺の陣」にしてはどうじゃろう。ついでにトップ下の選手は「前線指令塔」、ボランチは「後方操舵手」と呼ぶことに決めようぜ。
◆で、いよいよ最後はディフェンスじゃが、これはもう迷う必要はない。フォーバックの場合はふつう、センターバック2人の左右の脇をサイドバック2人が固めて、機をみて攻撃に駆け上がるという、鳥が翼を広げたような形になるな。そこでこれを「鶴翼の陣」と呼ぶ。本来の「鶴翼の陣」は守備型の陣形じゃが、サッカーでは攻撃型の布陣と位置づけるのさ。もちろんそのためには、鶴の羽ばたきのような両サイドバックの活躍が、必要となるんじゃがね。じゃあ、スリーバックは? これは「三星の陣」で決まりじゃろう。「三星」はむろんオリオン座の三ッ星からとったもの。これ中国では昔から将軍星と呼ばれ、戦いに勝つという縁起のいい意味があるんじゃ。つまり三つの星が連携して動き、敵の攻撃陣を封じ込めれば、勝利は間違いなしということさ。
どうだい、なんだかそれらしくなったじゃないの。脳ミソがくたびれたけど、これで少しは中高年にもサッカーの魅力を伝えられるんじゃないのかな。自陣と敵陣が対峙するサッカーは、まるで戦国時代の合戦絵巻のようでもある。要は、見る側にその面白さを伝え、イメージを掻き立たせる工夫が大事ってことなのさ。なに、トルシエさんが以前やってたフラットスリーは、どう呼べばいい? そうさなあ、フラットスリーだから「三平の陣」にでもしておくか。みなさん、どうもスイマセン。
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