その22.1万年前から愛用してます(2000.6.12)

じめじめした梅雨の季節になってしまったが、ときおり肌寒い日もある今日この頃だね。そんなときの熱い一杯のコーヒーなどは、またなかなかオツな味と香りがするな。特に最近、公園のノミの市で買ってきた古伊万里風のコーヒーカップで飲むのが、わしの楽しみになっておるわけ。こう見えてわし、焼き物にはうるさいんじゃよ。なに、今川焼きだろうって? あーキミね、お尻に焼き印を押してあげようか。
だいたい火と土が出会うところに、焼き物は生まれるな。人間が火を自由に発火させることが出来るようになったのは、いまから2万5千年ほど前の時代だと言われておる。たまたま質のいい粘土の上でたき火をしたら、その下の土が硬くなるのを偶然に発見した、と言うのが焼き物の始まりだったんだろうよ。昔の人にとっては思わぬ“掘り出し物”だった、なーんてね。
人類が初めて作った焼き物は土器だったな。土器とは粘土で作り、うわぐすりをかけず600〜900度の温度で素焼きしたものじゃ。わが国の縄文土器や弥生土器などはこれにあたるね。ちなみに縄文土器は1万〜1万3千年前の世界最古の土器、という測定結果が出ておるから驚くね。焼き物には他に、陶器、せっ器、磁器がある。陶器は、粘土を素地にうわぐすりをかけ、1200〜1300度の温度で窯で焼いたもの。せっ器は、同じくうわぐすりをかけ窯で焼いたものじゃが、素地は吸水性のないもの。磁器は磁石を砕いて素地とし、うわぐすりをかけて1300〜1400度の高温で焼いてある。わしの愛用の古伊万里風コーヒーカップは、この磁器じゃね。指で軽くはじくと、チンとガラスみたいないい音がするよ。値打ちものかも知れないから、いっぺん「なんでも鑑定団」に出してみっか。
わが国で磁器が生産されるようになったのは、今から400年ほど前の元和2年(1616)頃と考えられておるな。豊臣秀吉の朝鮮出兵のおり、肥前(佐賀)の鍋島直茂がかの地から連れ帰った陶工・李三平が、有田の泉山で磁石の層を発見し、天狗谷窯で磁器を焼いたのがその最初と言われておる。これが有田焼の始まりじゃ。有田焼はやがてオランダ東インド会社の注文を受け、伊万里港からヨーロッパへ大量に輸出されるようになったな。有田焼のことを伊万里と呼ぶのは、そのためじゃ。知ってたかい?
この頃は、プラスチックや金属の容器なども増えてきたが、やっぱり陶器や磁器の持つ独特の良さにはかなわないな。手にもなじむし、何と言っても味わいがある。まずい料理も美味く見えるもんね。1万年以上も昔から人間が使い続けてきた、土を火で焼いて作った器がいまも一番じゃよ、うん。なに、お酒もグラスで飲むよりは徳利にお猪口がいい? えらいね、キミ。わしは飲めるんだったら、入れ物は何でも良いんだけどな。