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その23.お尻の光は初夏の色(2000.6.27)
ホタルの季節じゃね。暗い闇の中をフワフワチカチカと飛ぶ青い光の群は、まさにファンタジック。日本の夏の風物詩とはこのことじゃよ、うん。どこぞのマンションのベランダなどで、部屋から閉め出された哀れなオヤジのふかす、情けない煙草の火の点滅とはエライ違いじゃ。カワイソー。
ホタルが光るのは、求愛行動のためのコミュニケーションの手段なんじゃ。つまりオスとメスの光通信。だいたいゲンジボタルの場合、飛び回っているのはほとんどがオスで、集団でチーカチカと同時発光するんじゃね。え、メスはどこかって? そこは女性らしく、草むらなどにじっとひそんでいるわけ。棒などを使い草にそっと刺激を与えると、光を出したりするよ。ホタルのかすかな光で求愛行動を行うためには、真っ暗闇が必要なんじゃ。ま、恋人同士が暗い場所が好きなのは、人間も同じなんだがね。昨今、ホタルがあまり見られなくなったのは、夜が明るくなったためかも知れんな。
しかし、はかなく美しいホタルの成虫じゃが、幼虫は親に似つかぬ恐ろしい姿をしているな。モスラの幼虫も真っ青のグロテスクさじゃよ。水中で孵化した幼虫はカワニナという巻き貝をエサに成長して、7月から翌年の3月頃まで川の中で過ごし、3センチほどになると上陸して土の中にまゆを作るわけじゃ。この幼虫は、すでにお尻のあたりから弱い光を放つというから、ちょっとこわいよ。東南アジア・ボルネオあたりの、陸生ホタルの幼虫はまさに怪獣じゃ。これのメスは親になっても幼虫とほとんど同じ形で、森の中の地面を歩きながらお尻を発光させるとか。ゾゾーッ。ところがオスは普通のホタルと同じ姿・形で、飛び回ってこのオバケのようなメスを探し出し、しっぽの先にちょこんと止まって交尾をするんじゃな。なんだかみじめだね、オスって。
ホタルのお尻が光るのは、発光細胞の中のルシフェリンが、ルシフェラーゼという酵素の作用で酸素と結びついて、分解するときに光を発するからなんじゃ。さわっても熱くはない光じゃ。これを冷光というな。もっとも、熱かったら交尾のときに火傷をしちまうけどね。あーなたーの燃えるお尻でー、アチーッ。ルシフェラーゼという酵素は、生物のからだの内部で発光をうながすための、触媒のはたらきをするタンパク質の一種じゃね、うん。
ちなみにあの「源氏物語」では、主人公の源氏が蛍の光で姫を照らし出す情景が描かれているし、「伊勢物語」にも同じ様な場面がある。「枕草子」にも、有名な「夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多くとびちがいたる」の一節があるぞ。平安時代からホタルの光は、日本人の心をしっとりと照らしてきたんだね。ほーほー、ほーたる来い、こっちの水はあーまいぞ、か。今夜はホタルイカをつまみに、あーまい水でも飲みたいね。そう言えば、大分の蕎麦焼酎がまだ戸棚にあったかな。もちろんわし一人で飲むんだがね、へっへっへ。
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