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その31.天高く、富士山も高く(2000.10.28)
いやー、すっかり良い季節になったな。天高く馬肥ゆる秋、なんてね。澄んだ空を見ていると、気分さわやか食欲もりもり。生きる希望が湧いてくる、というものじゃ。
この季節に東京タワーなんぞに登ると、晴れた日には富士山がよく見えるよ。透き通るような青い空の彼方に、うっすらと雪をかぶったあの美しい山容を望んだときには、本当に感動するなあ。日本に生まれて良かった、としみじみ思うものじゃよ。おっと、帰りには同じ東京タワー内にある蝋人形館に寄って、もう一度、別の感動を味わうのが通というもの。
富士山から遠く離れた地域の人には、インターネットで24時間、その姿をライブ映像で見せてくれるサイトもある。試しに検索エンジンで探して、いちど体験してみると良いよ。と言っても君ね、昼間に限るよこれは。夜見ても真っ黒い画面が見えるだけ、だっちゅーの。
ところで、富士山が見える地域って、どれくらいの範囲なんじゃろうかね。これが、意外と広いんだ。もちろん、遠く離れた地域ほど高い山に登らないと見えないけどね。手元にある資料によると、東の限界は千葉県の犬吠埼、北東の方角では栃木県の那須岳(1917m)、北の方角では新潟県の焼山(2400m)、西の方角では岐阜・滋賀県境の伊吹山(1377m)、南西の方角では、な、なんと奈良県の法師山(1120m)と言うから驚くね。ずいぶん遠くまで見えるもんじゃな。もっとも、わしも現地で見た訳じゃないから、えらそうには言えんがね。これはあくまで、見えるとされている地点なの。
富士山の標高は3,776m。その頂上には、直径約800m、深さ約200mの噴火口がある。最後に噴火したのが、いまから約300年前の1707年(宝永4年)のことじゃったな。そのときの爆発的な噴火のせいで、宝永山と3つの火口が出来たんじゃ。このときの火山灰は江戸にも降り注いだというから、ゴホンゴホン、江戸っ子もまいったろうね。宝永山、知ってるじゃろ? 富士山の南東斜面に盛り上がった、タンコブのような山のことじゃ。もっとも、あれでも標高2,693mはあるんだね。歴史的に見ると、富士山は400〜500年ごとに大きな噴火を繰り返しておる。この次、いつまたドカンと来るかも分からんよ。まだまだ若い火山なんじゃ富士山は、わしみたいにな。
「富士には、月見草がよく似合ふ」という有名な言葉は、作家の太宰治が「富嶽百景」の中で書いたものじゃ。乗り合いバスの中で、富士山とは反対側の窓の道ばたに、ポツンと咲いた一輪の花を見つけて、主人公は巨大な山と向き合うそのけなげさに感動している。これ、わしの好きな作品じゃよ、オホン。富士山は昔から、万葉集や竹取物語などを始めとして、文学作品によく登場しているな。良くも悪くもあの姿は、日本人にとって自分の心を映す鏡なんじゃね。あるときは聖なるものとして、あるときは俗なものとして・・・。なに、人工衛星から見れば、地上に出来たただの吹き出物だろうって? 君ねえ、やっぱり一晩中インターネットで、じーっと富士山を眺めていなさい。
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