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その35.20世紀は除夜の鐘とともに去りぬ(2000.12.24)
とうとう、今年もおしせまってきたな。あとわずかで新しい年を迎えることになるが、一年の終わりのけじめはNHKの紅白歌合戦ではなく、やっぱり除夜の鐘だよね。いや、天童よしみやサブちゃんの歌もいいんだけどさ。
じつは、わしも川口の鋳物工場で研修していた若い頃、この梵鐘づくりを手伝ったことがある。梵鐘とは寺院の鐘楼などに置かれた、つまり釣鐘のこと。熱いし、割れるし、あれはほんとに大変な作業じゃったな。こう見えてわしも苦労をしてるんだよ、ホント。梵鐘は砂と粘土で作った鋳型に、銅、錫(すず)の合金を流し込み、仕上げをして製品となる。ゴォ〜ンと鐘の音に重く余韻がこもり、しかも姿の美しいものが良いとされておるな。もっとも、音色を決める銅・錫の混合割合や鐘の厚さは、つくる技術者の秘伝とされているんじゃ。すべてがオーダーメードの手作りだから
、世の中に同じものは二つとないね。まあ、音を出す美術工芸品といったところかな。1個の製作には、約3〜4ケ月くらいの手間がかかるんじゃよ。
ところで、除夜とは古い年を除く日、つまり大晦日のことじゃな。除夜の鐘は百八つの煩悩(ぼんのう)を祓うと言われているが、なぜ百八なのかキミは知ってるかな。なに、それ以上鐘を突くとくたびれるから? ま、そんなことだろうと思ったよ。
よく聞きなさい、オホン。まず、人間の眼(げん)・鼻(び)・耳(じ)・舌(ぜつ)・身(しん)の五感に意(い)を加えた六つの感覚、これが煩悩の源でな(納得!!)、それぞれに好・悪・楽・苦・普通・何でもない、の六段階を掛ける。で、六掛け六で三十六。これに、それぞれ過去・現在・未来の三種類が加わるので、その三を掛けると百八になるんじゃね。エエ、分かったかな? これは、屁理屈で何とか百八にこじつけたのではなく、ものの本にちゃんと出ているんじゃ。
この百八の煩悩をうち消すように大晦日には除夜の鐘が、遠くから聞こえてくる。わが国では、鐘や鈴の音に浄化作用がある、と古くから信じられてきたんじゃな。ああ、耳を澄ませばあの音は、わしが幼い頃遊んだふる里の山寺から、次から次へと共鳴しながら伝えられ、心の底に響いてくるようじゃ。思わず「おか〜ちゃん〜」と遠吠えのように叫びたくなる深ーい音色だね。気が付けば、頬を伝わる涙を手の甲で拭っているんじゃね、このわしも。トホホ、今年も罪深い一年だったなあ。もっとも、一瞬、来年こそはと誓ってみても、数分後の元旦にはすぐに酒で忘れる、と言うのが例年の行事なんだがね、テヘヘヘ。
まあ、さっきの涙で煩悩はすべて祓われたと勝手に決めて、煩悩のおもむくままにまた一年をスタートさせるのが、凡人の強さかもしれないな。よーし、目標はないがまた頑張るゾ。と言うわけで皆さん、良い年をお迎え下さい。そして、21世紀もよろしくお願いします。
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