その39.二人を結ぶ見えない糸は(2001.3.1)

 そろそろ春の気配が、天気図や公園の木々などに感じられる季節になったが、残念なことに弥生3月を目前に、きんさん・ぎんさんの妹の方、蟹江ぎんさんが108歳で亡くなったな。姉の成田きんさんが昨年亡くなった後を追うように、一年後にはぎんさんもじゃ。やっぱり双子だけに、寿命が尽きるのもほぼ同じ頃だったと言うことかな。日本中の人気者だっただけに、なんだかちょっと寂しいね。ご冥福をお祈りします、グスン。
 しかし、近頃では双子のうち先に生まれた方が姉(兄)と呼ばれるが、ちょっと前までは後に産まれた方がなぜか姉(兄)と考えられていたな。きんさん・ぎんさんも、ほんとはぎんさんが先に産まれていたため、妹になったんだとか。もしも二人が現代に産まれていたら、ぎんさんがきんさんで、きんさんがぎんさんになっていたはずじゃ。とすると二人の性格や生き方も、少しずつ違っていたかも知れないね。なんだかややこしいけどさ。
 みんなも知ってるとおり、双子には一卵性と二卵性がある。一卵性は一つの卵子から、二卵性は二つの卵子から生まれる双子だよね。生命の誕生は卵子と精子が結ばれることで始まるんじゃが、受精した卵子は細胞分裂をくり返し、母体の子宮の中で胎児へと成長する。で、二卵性双子の場合は、二つの卵子が同時に受精し胎児へと成長するわけ。つまり、もともと別人ってこと。しかし、一卵性双子の場合は本来一人の細胞が、なぜか途中で二つに分離し双子になるんじゃ。だから、DNA遺伝子レベルでもまったく同じ。まあある意味、クローン人間とも言えるわけじゃね。どうりでよく似ているはずだよ。なに、一人の細胞がなぜ二人に分離するのかって? それはまだ解明されていないんだとさ。
 わしらの若い頃は双子と言えば、ザ・ピーナッツやこまどり姉妹が代表じゃよ。「恋のバカンス」に「ソーラン渡り鳥」、ああ良かったね。そうそう、リンリンランランにリリーズも可愛かった。スポーツ選手では宗兄弟がそっくりだったし、プロレスのマクガイア・ブラザースと言うのもいたな。最近だと、茉奈ちゃん佳奈ちゃんの姉妹に、スキーの荻原健司・次晴兄弟がよく似ておる。え、おすぎとピーコ・・・? まあとにかく、双子の人気者と言うのは、いつの時代も微笑ましい兄弟愛やビジュアル的な魅力で、われわれの耳目を惹きつけて来た。見ているだけでも何となく不思議で、温かい気持ちになるんだよね。
 以前観た「ツインズ」と言う映画では、アーノルド・シュワルツェネッガーとダニー・デビートの似てもにつかぬデコボコ双子が、無意識に揃ってお尻を掻くシーンがあって笑ったな。しかし、目に見えない双子のコミュニケーションとは、われわれの常識では理解できないものかも知れんよ。アメリカ・オハイオ州で実際にあった話じゃが、死んだと聞かされて別々に育った双子の兄弟が、40年ぶりに再会したとき分かったことは、乗っていた車が同タイプで、趣味が同じ木工で、初婚と再婚の相手の名前がともに同じで、腕時計や靴の好みが同じで、長男・飼犬の名前が同じで・・・。これらはただの偶然かも知れんが、何か得体の知れない絆のようなものを感じさせてもくれるな。そう思わんかね?
 最近では、一個のウシの受精卵を鋭利な刃で二分してそれぞれを別の雌ウシに移植し、人為的に一卵性の双子を作る研究も進んでおる。これ、質のいい肉牛を低コストで効率的に生産するためじゃそうな。しかし、人間がここまでやって良いのか、と言う気もしないではないがな。なに、安くてうまい牛肉が食いたくないかって? そりゃあ、食いたいに決まっとるよ、炭火焼きでな。