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その50.太い奴だよ、うどん(2001.8.3) ◆あい変わらず猛暑が続いておるが、今度は東京都の水ガメが底をついてきたそうな。ああ、イヤだね〜。暑い日のシャワーが思いっきり使えなくなったら、ワシどうしよう。トイレのウンコもスカッと流せなくなるし、手だって洗えなくなるかも・・・。なに、もっと爽やかな話題にしろ? はいはい。しかし、そうは言ってもこの暑さで面白い話も思い浮かばないしな、しょうがないから前回の続きでもやるか。えーと、この前は確か「そばソーメン」の話だったよな。じゃあ、今回は「うどん」の番か。決まり、これで行こうじゃないの。え、安直に決めるとは太い奴だ? そう、うどんって確かに、そばやソーメンより太いんだよね。 ◆いままで一番うまかったうどんの店はと問われたら、実はワシちょっと返答に困るんじゃ。別にボケたわけじゃないよ。その店のことはよく覚えてるんじゃが、名前が分からないんだね。変だと思うじゃろ、変なんじゃよ。そこは山梨県の富士吉田市のどこかにある店でな、今から十数年前に博物館の仕事で行ったとき、地元の人の案内で入ったわけ。驚いたのは、そこが看板も出してない普通の民家の広い座敷で、沢山の人が座卓を囲んでうまそうにうどんを啜っていたことじゃ。なんて家族の多い家かと思ったら、実はみんなお客さんだったんだね。そこは昼間だけ自宅を開放して、自家製の手打ちうどんを食べさせるお店だったんじゃ。ここで食べたうどんは本当にうまかった。野菜の入った素朴な田舎風のつゆに、かっちりと角のある茹でたてのうどんが良く馴染み、噛むと口の中に小麦粉の香りがぱあっと広がったね。あんなに弾力性と香りに富んだうどんを食べたのは、初めてじゃったよ。お代わりして2杯食べたんだが、もう1杯はいけたね。なに、ぜひその店を教えてくれ? だから、名前が分からないんだってば。探してみたら、キミ? ◆山梨県と言えば「ほうとう」も有名じゃが、元々「うどん」も「ほうとう」もルーツは同じ。禅僧の手で中国よりわが国にもたらされた「はくたく」から分かれたんじゃね。「はくたく」の音が変化して「ほうとう」になったと言う説もある。はくたくとは、小麦粉をこねて手で細長く薄く延ばし、煮て食べたものらしい。何と言ってもソーメンと違って、うどんやほうとうの魅力は、腰のある噛みごたえにあるな。塩を加えた小麦粉を水で良くこね、足で踏み、しばらく寝かしたものを棒でのばして細く切る。この力わざが、あの弾力性を生むんだね。讃岐うどんで有名な香川県では、出来立てのうどんに薬味と醤油だけをかけてズルッとやる食べ方があるそうじゃが、これってうどんの醍醐味そのものじゃな。ああ、ウマソ〜。ちなみに、香川県の人が一年間に食べるうどん玉の数は130個だとか。全国平均の4倍だと言うから、すっごいね。 ◆山梨や香川の他にも、秋田の稲庭うどんや群馬の水沢うどん、大阪のきつねうどんに福岡の丸天うどんなど、全国にうまいうどんは沢山ある。が、忘れちゃいけないのが名古屋。ここの味噌煮込みうどんはまた独特じゃ。熱い土鍋入りの、八丁味噌で煮込んだ硬めのうどんを汗だくでフウフウ啜ると、暑さが吹っ飛ぶと言うもの。味が濃いから、ご飯のおかずにもなるしね。そもそもこれは、大正期に出来た専門店のものが定着したらしいんじゃが、いまや名古屋の味だもんなあ。もう一つ、ここの名物に「きしめん」がある。これは平らなうどんで、薄口醤油のつゆを掛け花かつおを乗せて食べる。以前、新幹線の列車を待つあいだ名古屋駅のホームでかき込んだきしめんの味は、今でも忘れられんよ。平べったいので、舌の上に座りやすいのがどえりゃあいいね。もちろん、土産にキオスクで買って帰ったけどさ。 ◆うどんは冷やしてよし、温めてよし、煮込んでもよし。おまけに太いのから細いのまで、全国に色々な種類がある。噛んでも呑み込んでも独特の喉ごしや味が楽しめる。東京では今ひとつ人気がないが、全国的にはやはり、麺類の日本代表がうどんじゃないのかな。ううー、腹が減ってきたぞ。なに、キミも手打ちを自分で作ってみたい? 言っとくが、こねた奴を足で踏むときは、上にビニールシート敷くのを忘れんようにな。 |