その51.“象さんのポット”現象を知ってますか?
(2001.8.17)

あ〜あ、待ち遠しいよ。早く来てくれんかなアレが。え、豆腐屋さんが来るのを待ってるのかって? 違うよ。冷や奴やガンモもいいけどさ、わしが待ってるのは台風。でかいのが一発どどーんと来てくれれば、雨も降るし気圧の配置も変わるし、少しは涼しくなるんじゃないかと思ってね。それくらい今年の夏はしつこく暑いな。なんか、テレビのお笑い番組を見ても、笑う気力もないよ。まあもっとも、近頃、テレビのお笑いがちっとも面白くないせいもあるけどさ。
 
最近のテレビのバラエティ番組に共通してるのは、スタッフの笑い声をわざとらしく流していることじゃ。笑っているのはテレビの裏方の連中だから、いわばサクラ。つまらないギャグでもことさら大声で笑ってくれるから、なんとなく面白かったような錯覚に見る側も陥ってしまうわな。だけど気が付いてみると、こちらの顔は固まったままってことがよくある。「笑っていたのはスタッフだけだった」なんて、金城武のCMのキャッチコピーみたいじゃね。
 それから、スタジオに若い女の子なんかを大勢集めて、公開形式で行われる番組もある。「笑っていいとも」なんかその代表じゃが、こちらの客は箸が転んでも笑う世代だから、ちょっとしたギャグでもスタジオ内は異様に盛り上がるね。ハエが1匹飛んだだけでも、大爆笑だもんなあ。狭く密閉されたスタジオという入れ物に、笑いたい盛りの若い女の子の集団を詰め込めば、そこはもうちょっとした異空間。つまらないタレントのつまらないギャグも、まるでガソリンに火花じゃ。これ、きっと観客全員がある種異常な心理になって、過剰反応をおこすんじゃろうな。だけど、テレビを見てる方はシラケるばかり、と言うのはよくある話さ。こんなギャップを、わしは“象さんのポット”現象と呼んでおる。なに、聞いたことがないって? 困るなあキミ。
 
今から20年ほど前に放映されたテレビ番組で、「お笑いスター誕生 !!」というのがあった。公開録画形式のお笑いスター発掘番組でな、毎週土曜日のお昼が楽しみじゃったね。司会が山田康雄に中尾ミエ、審査員には鳳啓助・京唄子にタモリや赤塚不二夫もいたっけ。10週勝ち抜けばスターへの道が開ける厳しいサバイバル番組じゃったが、ここから巣立って成功したタレントは多い。コロッケやとんねるず、シティボーイズにウッチャンナンチャン等々。わしは、お客にはいまいち受けなかったが、イッセー尾形とミスター梅介を密かに応援していたよ。
 象さんのポットも、その中の若手漫才コンビの一つだったな。まあ、あれを漫才と呼んでいいのかどうか。とにかく話芸も何もないフツーの二人の若者が、ぬらっとした無意味な会話をするだけのものだった。ところがこの意味のなさが、客席を埋めた若い女の子に意外に支持されたんじゃね。10週とまでは行かなかったが、何週か勝ち進んだりもした。だけどこのコンビが受けたのは、この番組の中だけの話。特に面白かったわけでもないから、結局、他のテレビなどで見掛けることもなく、番組の終了とともに静かにフェイドアウトしたってわけさ。まあ、特定の空間の異常な群衆心理が生んだ、幻のスターだったということかな。
 
プロとしてお客を笑わせ続けるというのは至難の業じゃ。一時的に人気を得ても、それを持続できる芸人はそうはいない。わしの敬愛するタモリみたいな才能は、希有の存在じゃね。テレビの歴史というのは、消えていった芸人の歴史でもあるな。実力のない者は、あっという間にふるい落とされてしまう。スタッフや若い女の子の笑いに頼ってるいまのタレントも、はかない命かも知れんよ。キビしいねえ。おーいどこへ行ったんだい、九十九一、マギー司郎にぶるうたす!