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その54.昔から庶民の味方、サンマ(2001.9.29)
◆いやはや、やっと近頃涼しくなって、朝までグッスリ眠れるいい季節になったね。今年の夏は寝汗のせいで、何度夜中に目が覚めたことか。気が付けば、パンツまでぐっしょりだもんなあ。気持ち悪さでその後、なかなか寝付けなかったもんじゃよ。そんなことがキミもあったじゃろ。なに、オネショで? そりゃいかん。
しかし、この季節になるとうまいのが秋刀魚、つまりサンマじゃね。塩をふって炭火でじっくり焼いた奴にユズを絞り、大根おろしを添えて熱いうちに食べると、これがもう最高にうまい。腹わたの苦いところも、またなかなか味があっていいもんじゃね。ガスなどの強火で急いで焼いたのは、ドヒャー、外は黒こげ中身は半生という場合もあるから要注意! やっぱり、遠赤外線効果というのが大事なんじゃなあ、これ。
◆サンマは傷みやすい魚じゃが、新しいのを刺身で食べるもいいね。漁港近くのお店なんかで出すものは、もう信じられんほどうまい。冷凍技術が進んだのか産地からの運搬が速くなったのか、最近は都内の飲み屋さんでもこれを出す店が増えてきたね。有り難い有り難い。イワシやアジに比べるとサンマは臭いも少なく、とろりとろけるような身の柔らかさが舌に心地いいんじゃ。
むかしむかし、わしがまだ学生だった頃、同じ下宿に房総半島生まれの男がいたんじゃが、ある日お袋さんが実家から持ってきた手作りのサンマ寿司を、貰って食べたことがある。開いて酢で締めたまるまる一本のサンマを酢飯に乗せ、そのまま適当な大きさに切ったワイルドな姿寿司だったが、これはうまかったネ。いかにも千葉の田舎の手作り料理という感じでな、あのときの酸っぱいサンマとごはんの味は今でも覚えておるよ。あ〜あ、若き日が懐かしい。
◆うまいだけではなく、サンマは栄養の点でも優れた魚じゃ。中でもタンパク質は、牛肉やチーズよりも良質と言われておる。それに、多価飽和脂肪酸のEPAには血栓防止効果が、DHAには脳の働きを高める効果があるとか。わしの頭が冴えてるのは、サンマのお陰かな。また、貧血に効果のあるビタミンB2、苦い腹わたにはビタミンAやDも豊富に含まれているんじゃ。サンマはまさに“泳ぐ栄養素”だね。
江戸時代には「三馬」という字を当てて使ったほど、サンマは大衆に人気があった。つまり、脂ののった奴を一匹食べると三馬力もパワーアップする、と言うことらしい。それも、身はもちろん腹わたから小骨まで、全部食べるから良いんだね。落語の「目黒のサンマ」では鷹狩りの途中に寄った目黒の茶屋で、真っ黒く焼いたサンマを差し出された将軍家光公が、そのうまさを忘れられず、後日お城で家来に所望すると言う話じゃ。小骨をとりすっかり脂を抜いて出てきた、変わり果てたサンマの姿に思わず家光公は、「サンマは目黒にかぎる」と言ったとか。庶民の食べ物をそのまま出すわけにも行かず、家来は気を利かせたんじゃろうが、やっぱりサンマから小骨や脂肪を抜いちゃあダメだわな。
◆実は何を隠そう、わしのいちばんのお気に入りはサンマの缶詰なんじゃ。中でも最高なのが蒲焼きの缶詰。キミも知っとるじゃろう、あの独特の四角い形をしたスグレモノ。昔は缶切りで開けるとき、けっこう苦労したものさ。あの甘辛いタレで煮込んだ飴色の奴を、てんこ盛りのどんぶり飯の上に広げて乗せ、タレをよーくしみ込ませてワシワシと一気にかき込むと、世界はもうバラ色と言うもんじゃね。これが、サンマ蒲焼き丼。何たって、安いしうまいし栄養がある上に、手っ取り早い。5秒くらいで出来上がりだもんな。ここにキュウリのお新香があれば、最強の布陣じゃ。え、キミも実はファンなの? うーん、おぬし出来るな。
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