その56.君はアナウンサー、僕は解説者(2001.10.26)

ウハハハハのハ。ああ嬉しいね。わがスワローズが日本シリーズで勝って、5度目の日本一じゃよ。それも、シーズン前にはBクラス確実と言われた戦力で、猛打近鉄に4勝1敗の圧勝だから驚きじゃ。どこかの金満チームみたいに、ドラフトやFAに大金を投入してかき集めたスター軍団と違って、コツコツ育て上げた選手や他球団をクビになった選手がほとんどだから、これこそ超ミラクル。まさに、価値ある勝利。若松監督もさぞ嬉しかったろうね。
 しかしそれにしても、テレビの視聴率は意外にと言うか予想通りと言うか、低かったな。夜のゴールデンタイムの放送で20%を超えない日本シリーズと言うのも、昔を知る者にとってはちょっと残念じゃね。まあ、東京ローカルのヤクルトと大阪ローカルの近鉄の対戦だから、いまどき全国放送で高視聴率を期待する方がどだい無理なんだけどさ。なに、やっぱり巨人が出ないと? 悔しかったら出てみいちゅーの。

もっとも、最近のプロ野球中継がつまらない原因の一つに、アナウンサーや解説者のしゃべりが面白くない、と言うのもあるような気がするね。どれも紋切り型で、話してる内容も同じ。特に、選手時代の実績を鼻にかけたり、きれい事ばかり言ったりする解説者なんて、ホント吐き気がするわい。今回のシリーズでいちばん面白かったのは、フジテレビが神宮球場から放送した3戦目の試合じゃ。この放送をわしは副音声で聞いたんだがね、江本猛紀・豊田泰光両氏の二人だけの毒舌放談は、いやー久々に目から鱗が落ちたよ。あれほど惹きつけられたテレビ中継というのも、最近なかったね。ベスト毒演賞でもあげたいくらいじゃ。
 近鉄・中村選手のユニフォームのズボン丈の長さ、ペナントレースではあれほど打った近鉄がシリーズでは打てないわけ、ヤクルト・古田捕手のリードに若松・梨田両監督の采配について、などなど。他の解説者が間違っても言えないことを、本音でズバズバ言う二人の毒ガスの危険さに、わしは最後まで圧倒され続けじゃったな。これじゃよこれ。毒にも薬にもならん解説なんて、ない方がまし。なんの魅力もないもんね。

同じことはサッカーの中継にも言えるよね。動きの少ない野球に比べ、休む間がなく攻守の切り替えの速いのがサッカー。のんびりと雑談などで間をつなげる野球中継と違い、こちらはアナウンサー自身の知識や臨機応変の適応力など、もろに力量が問われるスポーツじゃな。いわば、90分間をどう切り盛りするかが腕の見せ所。解説者はサブでしかないんじゃ。ところが、中には勘違いしてるアナウンサーもおってな、やたらと絶叫すればいいと思いこんでる者や、90分間えんえんと“説明の鬼”と化して喋り続ける者もおる。しかし、適当な間や緩急がないと、これじゃ聞いてる方は疲れるばかりだわな。
 サッカーに対する高い見識と冷静沈着な語り口、それでいてゴール前の攻防では大いに盛り上げてくれるアナウンサー。これこそが理想じゃが、まあ、なかなか少ないのが現実じゃないのかな。わしの好みは、昔なら「ダイヤモンド・サッカー」の金子勝彦さん、いまならNHKの山本浩アナウンサーかな。え、しぶい? そこがいいんだってば。

最近、メジャーリーグ中継がお茶の間にも浸透してきたが、さすがショービジネスの本場だけに、アメリカのテレビのアナウンサーの喋りは、どれも個性的で表現がうまいね。ま、中にはちょっとオーバーじゃないかと思う部分もあるけどさ。紋切り型の好きな日本のアナウンサーは、少し見習うべき点があるんじゃないのかな。ただし、試合の主役はあくまでグラウンドの選手達。ゲームの進行そっちのけで、雑談や技術論などに没頭するアナウンサーや解説者は困るね。試合が盛り上がらないこと、この上なしじゃ。こんなときは音を消して見ればいいんだが、そうすると大事な歓声も聞こえなくなるしなあ。え、自分で歓声をあげる? よーし、一回やってみっか。