その70.祭りが終わって残ったものは(2002.7.10)
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◆はぁ〜、気の抜けた毎日。胸躍らせた戦いの日々も、遠い過去のよう…。え、なにをため息ついてるんだって? 分かるじゃろう、この虚脱感を。日本中が熱狂し、テレビの視聴率が驚異的な数字を上げたサッカーW杯も、ブラジル5度目の優勝で幕を閉じてしまった。残ったのは祭りの後の寂しさと空しさばかり、と言うわけさ。もちろんあの感動の記憶は、いまも胸の中にしっかり刻まれてはいるんじゃがね。
なんたって日本代表はよくやってくれたよ。わしが教えたとおり(?)の組織サッカーで、ベルギー、ロシア、チュニジアを蹴散らし、見事にベスト16進出だもんなあ。4年前のフランス大会で1勝も上げられなかったことを思えば、大躍進と言ってもいいじゃろう。だけどあのトルコ戦は、なんかちぐはぐな戦い方だったような気もするわな。それまでの鈴木・柳沢の2トップに替えて、いきなり西沢・三都主の2トップ。左サイドからの突破が売り物の三都主選手がFWだって? あれはなかったんじゃないの、トルシエさん?
◆しかし、今回ほど一次リーグで番狂わせが起きた大会もないね。なにしろ、優勝候補一、二番手のフランス、アルゼンチンが相次ぎ敗退。ジダン、バティがうつむく姿は印象的じゃった。おまけにポルトガルまで、一度も日本に来ることなくサヨナラだもの。それはないよフィーゴ、って言いたくもなるわい。な〜んか、国に急ぎの用事でもあったのかなあ。
逆に、日本・韓国のアジア勢、アフリカの新星・セネガル、それにサッカー不毛の地と言われた北米代表のアメリカなど、新勢力の台頭が目立った大会でもあったな。それまではだいたいヨーロッパと南米、二大勢力の争いというのが通例だったからね。そうそう、3位に躍進したトルコの活躍も特筆ものじゃった。もっとも、トルコってヨーロッパなのかアジアなのか、どっちつかずなところが悩ましいけどさ。
◆とにかく、開催国の日本は決勝トーナメントの一回戦で敗れて終わった。共催国の韓国がベスト4入りしたのは羨ましい限りじゃが、プロができてやっと十年のサッカー発展途上国が、トントン拍子で勝ち抜けるほどW杯は甘くはないと言うことじゃね。サッカーが国民の生活の奥底まで根付き、Jリーグが大いに盛り上がり、代表が負けたら腐った豆腐(イタリアならトマト、フランスならブドウ?)が飛んでくるようになって、初めて日本は世界のサッカー先進国の仲間入りを果たしたと言えるじゃろう。
現状ではサッカーは、まだわが国のナンバー2の球技。W杯が終わったら新聞のスポーツ面は、プロ野球に米大リーグに甲子園の高校野球で埋め尽くされるはずじゃ。世界でもまれな“野球の国・日本”が、サッカー大国になる道は険しく遠い。まあ、野球が悪いとは言わんが、世界中の人たちと話題や感動を共有できるサッカーというスポーツを、思えばわれわれは長いこと日陰の存在にしてきてしまったな。世界一有名な日本のスポーツ選手は、イチロー選手ではなく中田英寿選手だと言うことに、いまやっと気付いたんだよね。
◆ともあれ、今回のW杯が日本に残してくれたものは大きかった。なんたって、それまでサッカーに見向きもしなかった、親父世代に近所のオバちゃん、OLにお年寄り、猫のタマまで、日本中が心を一つにしてわが代表チームを応援したっけ。勝ったときの感動、負けたときの悔しさ。町中の噂がサッカーで持ちきりだったものなあ。これこそ健全なナショナリズム。こんなことはわしが生まれてこの方、初めてのことじゃったよ。なに、明治維新以来? 投げ飛ばすよ、キミ。
まあ、小泉首相も言うとったが、「サッカーがこれほど感動を与えるスポーツだとは知らなかった」と言うのが、大方の日本人の感想じゃろうな。熱しやすく冷めやすい国民性じゃが、この感動を次につなげるためにも、Jリーグを始めとするサッカー文化を、日本中で大事に育てて行きたいものじゃね。つぎはドイツじゃ、頼むよキミも。わしもドイツビールでも飲みながら、応援するからさ。
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