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その71.キーワードは“ハングリー精神”(2002.7.27)
暑いね〜、まったく。今年の夏はどうやら猛暑となりそうじゃが、みんなも熱射病には気を付けような。なに、“ストーブの博物館・館長”と聞いただけで、倒れそう? そう毛嫌いしなさんなって。わしだってこの季節は、どこか高原の美術館の館長でもやりたいよ、美人の学芸員と二人きりでさ。♪風たちぬ〜なんてね。え、無理? わかっとるわい。
 しかし、最近さわやかな話題と言えば、大相撲・朝青龍の大関昇進じゃね。故郷モンゴルから単身、日本の高校に留学し、高砂部屋に入門後の初土俵以来、わずか22場所でこの快挙。なんたって全身バネのような体でスピード十分のうえ、闘志あふれる取り口が魅力じゃよ。笑うと細い眼がますます細くなり、なかなか愛敬もある。将来が楽しみな21歳の大器だね。もっとも、朝青龍(あさしょうりゅう)と言う舌をかみそうな名前が引っ掛かるんじゃが、聞くと、あれは母校・明徳義塾高の近くにある青龍寺というお寺の名前から取ったんだとか。だったら許そう。石段登りの苦しさを忘れずに、これからも頑張れアシャショウリュウ。

モンゴルではこの先輩に続けとばかり、大相撲入りを目指す若者が目白押しらしいが、これは楽しみじゃね。はっきり言って最近の大相撲は、学生出身の力士ばかりで面白くない。つまり、若いうちから相撲部屋でたたき上げられた、味のある力士が少なくなったと言うことじゃ。きっと少子化などのせいで、苦労の多い相撲部屋に入門する子がいないんだろうな。代わりに、顔が日本人そっくりのたたき上げモンゴル力士が活躍してくれれば、大相撲も盛り上がると言うもの。なんたって、向こうにはハングリー精神がある。苦しい修行にも耐えられるはずじゃね。
 少子化や一人っ子という、わが国の人口構成の変化がスポーツ界に与える影響は、決して小さくはないよ。昔のように原っぱで相撲や野球をやる子供の姿など、すっかり見なくなっちまった。だいいち、原っぱが無くなったもんなあ。

かつて、相撲や野球やボクシングといったわが国のプロスポーツ界には、貧しい家計を助けるために身を投じる若者も多かった。裸一貫・徒手空拳から、実力次第で大金と名誉をつかむことの出来る世界は、他に行き場のない男たちにとり魅力あるものだったんだろうな。親に家を建ててやるため、という涙ぐましい目標を持った者もいたはずじゃ。貧しさからの脱出は、何より強いモチベーションになるもんな。う〜ん、よく分かる。
 残念ながら、今の日本人からはハングリー精神というものが薄れてしまった。代わってサクセスストーリーを目指し裸一貫で頑張っているのが、外国からやって来たプアな男たち。大相撲ではハワイ勢の小錦・曙・武蔵丸などが親への仕送りで知られておるし、モンゴルの旭鷲山は故国への奉仕活動に熱心じゃ。アジアや南米からやって来て、日本のジムでチャンピオンを目指すボクサーも多いよ。なんか、戦後の貧しかった日本の若者を見るようじゃな。

まあ、経済大国の今の日本の若者に、ハングリー精神を持てと言うのはどだい無理な話。小さい頃から何不自由のない生活でおまけに一人っ子、ボールゲームなどをやる場所も限られていては、飢えたオオカミのような選手は出にくいわな。茹でたモヤシみたいな若者ばかりになっても、仕様がないか…。
 じゃが、心配はいらん。サッカー・Jリーグの鹿島アントラーズからベルギーのゲンクに移籍した鈴木隆行選手や、横浜F・マリノスからイタリアのレッジーナに移った中村俊輔選手は、異口同音にこう言っておった。「厳しい環境に身を置くことが、自分の進歩につながる」とね。レギュラーを約束された日本から、あえて厳しい海外のクラブに進出した二人に共通するのは、選手として進歩したいというハングリー精神じゃ。エライ! お金がすべてじゃないんだね。こんな若者がいる限り、日本はまだまだ大丈夫ってことじゃ。いや〜、わしも安心したよ。なに、キミもハングリー? ダイエット中で…? 首絞めるよホントに。