その79.“MUSASHI”は永遠の若者像(2003.3.31)
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◆冬が終わり、やっと本格的に春じゃね〜。ときどきクシャミが出たり、わけもなく鼻水が垂れたりするけど、これって空気中に花粉が舞っている証拠。こんな季節、わしが子供だった頃は青々とした野っぱらに出て、よくチャンバラごっこをしたもんだよ。“そこの行列、待て〜っ”なんて野武士みたいに、花摘みしている女の子たちを襲撃したりしてな。いかんなあ。
そんなチャンバラ好きの血が騒ぐのか、今年のNHK大河ドラマ「宮本武蔵」はわし、かかさず見ておるよ。主演の市川新之助は歌舞伎界のプリンスじゃが、野性味プンプンのところがいいな。立ち回りなんかの身のこなしは、さすがに決まってるもんね。本位田又八役の堤真一は芸達者だし、TOKIOの松岡君の佐々木小次郎もなかなか雰囲気がある。女優陣ではお甲のかたせ梨乃と、お杉ばばあの中村玉緒がはまり役じゃね。それにたまにしか出ないが、宮沢りえちゃんと寺島しのぶ嬢も存在感を見せておる。スタートしてまだ間もない今年の「武蔵」じゃが、今後の展開が楽しみだよね。
◆しかし、「宮本武蔵」と聞いてわしが最初に思い出すのは、やっぱり中村錦之助。古いという奴は、叩っ斬るよ。なんたって、内田吐夢監督・錦之助主演の東映映画「宮本武蔵」5部作は、日本映画史上に残る傑作なんじゃ。5年がかりで製作した武蔵の成長物語は、錦ちゃんの役者としての成長物語でもあったな。又八役は木村功。この二人の陰と陽、強と弱の描き分けは見事じゃった。武蔵と又八は、人間の心の両端を写す合わせ鏡みたいな位置付けでな。それに佐々木小次郎役の、高倉健サンもどえりゃあ格好よかった。この作品、アメリカなんかで公開しても受けたんじゃないかなあ。
もう一つ有名なのが、稲垣浩監督に三船敏郎主演という東宝映画の武蔵・3部作。錦ちゃんが華のある悩める武蔵を演じたのに対し、三船武蔵は寡黙で無骨な求道者って感じじゃった。鶴田浩二の美青年・小次郎も、品があってよかったなあ。武蔵の恋人お通役は、この映画の八千草薫に決まりじゃね。ただしこのシリーズ、又八の存在がまるで希薄。第1部では三国連太郎が演じ、三船・三国の強力タッグに期待を抱かせるものの、第2部ではありゃりゃ堺左千夫に交代。第3部にいたっては影も形もないんだものなあ。そりゃあないよ、監督さん。
◆これらのドラマの原作となっているのが、吉川英治の小説「宮本武蔵」じゃね。これ、昭和10年から朝日新聞に連載されたんじゃが、それまで評価の定まらなかった武蔵に新しい血と肉を与え、空前の大ヒット作となった。現在、わしらが知る武蔵像は、この吉川英治が生み出したといってもいいじゃろうな。今では国民文学とも言われるが、キミもいっぺん読んでみっか。なに、コミックでも大人気? ふーん、そうかい。
意外なようだが、この吉川版「武蔵」は海外でもよく知られておる。英語、ドイツ語を始め世界の23の言語に翻訳され、600万部を売ったというからスゴイよ。そう言えば少し前、ブラジルでベストセラーになったというニュースをテレビで見た記憶があるし、サッカー日本代表の元監督オフト氏の愛読書が、オランダ語版「武蔵」だったってのも有名な話じゃ。ついでに言えば、武蔵自身が書いた「五輪書」も翻訳され、「The
Book of Five Rings」として世界中で読まれているそうな。あのヒクソン・グレイシーもこの本の愛読者だというから、道理で強いはずじゃわい。
◆こんな「武蔵」が世代や国境を越えて、人々に愛され続けるのは何故なんじゃろう? ひとつは誰もがそこに、“永遠の若者像”を見るからかも知れんな。花も嵐も踏み越えて、剣ひとすじに生きようとする武蔵じゃが、また挫折も多い。強敵は次々と目の前に現れるし、お通との恋はうまくいかないし、強いだけではダメだと言われるし…。悩むところじゃね。こんな青春の蹉跌と闘いながら、一歩ずつ成長して行く武蔵の姿が、みんなの共感を呼ぶんじゃろうなあ。そう、学びながら必死に生きることの大切さを、吉川先生は教えているわけなんだよね。♪明日がある〜、明日がある〜、か。
というわけで今回は、“人間何ごとも、修養が大事”という、ありがたい結論に達して終わりにするか。なに、キミもさっそくプロレスのビデオを見て、武蔵のように闘いの道を究めたい? じゃあ、うちの猪木さんのビデオ持ってくか。
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