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その83.キャンプファイアはなぜ美しい?(2003.8.7)
ひゃ〜参ったね。長い梅雨がやっと明けたと思ったら、待ってましたとばかりの今年の猛暑だもんなあ。なんか太平洋高気圧も、ずいぶんフラストレーションが溜まってたんじゃないの。よ〜し見てやがれ!なんてさ。リレーのアンカーじゃないんだから、そんなにギンギン張り切りなさんなって〜の。
 じゃが聞くところによると、日本の夏の暑さは熱帯地方なみだとか。ネクタイ締めて働くには不向きな季節だよね。われわれ日本人も、欧米人みたいにひと月くらいバカンスをとって、どこか静かなところでのんびりキャンプでもしたいもんじゃな。なに、そんなことしたら会社のデスクがなくなります? 情けないなあキミも。だから、農耕民族だの働きアリだのと馬鹿にされるんじゃ。デスクがなくなったらわしがラスクでも買ってやるから、心配いらんて。

キャンプといえば、わしが初めて体験したのは小学生のとき。夏休みの行事として6年生だけ、学校に一泊したのを思い出すよ。校庭の片隅で飯盒炊さんをしてカレーを作り、夜は盛大なキャンプファイアを囲んで歌をうたったな。あの頃は戦争が終わってまだ十数年。わしら生徒が家から持ち寄った飯盒は、みんな父親が戦地から持ち帰ったものじゃった。男の先生たちが飯盒での飯の炊き方に詳しかったのも、きっと軍隊で経験してきたからなんだろうな。今となっては楽しい思い出じゃよ。もっとも、夜は教室でごろ寝というのが情けなかったけどね。
 そのとき教わった飯盒での飯の炊き方は、こうじゃった。まず、よく研いだ米に水を入れた飯盒をかまどの上の棒にかけ、強火で炊く。このとき中蓋は外しておく、あとでお皿として使うんだからね。吹きこぼれたら弱火にし、グツグツという音がしなくなるまでさらに炊く。頃合いを見て蓋を取り、うまそうに炊けてたらグー。また蓋をしてすかさず棒から外し、地面に広げた新聞紙の上に逆さにして置く。このとき、軍手をして飯盒がまだ熱いうちに、新聞紙で底に付いた煤をきれいに拭き取る。冷えたらこの煤がとれにくくなるって、あのとき先生は言ってたな。で、あとはそのまま15分ほど蒸らせば、おいしいご飯の出来上がりというわけさ。

だけど、屋外で食べる炊き立ての飯盒の飯というのは、どうしてあんなにうまいんじゃろうな。おかずが缶詰やキュウリのキューちゃんだけでも、パクパク食えてしまうのが不思議。でもキャンプの献立の定番といえば、やっぱりカレーだね。最近はレトルトなんてのもあるが、みんなでわいわいと鍋に肉や野菜をぶち込んで作るカレーは、なんたってうまいし人気がある。それに、メーカー各社のカレールーはどれもスグレモノだから、子供が作ったって失敗しないしさ。え、焚き火の灰や埃が入ってる? なあに死にはせん。それがまた隠し味になって、いいんじゃよ。
 それと、もう一つの定番がインスタントラーメン。こちらは作るのに手間が掛からないから、簡単にすませたい朝食なんかには向いてるね。特にみんなの分をまとめて一つの鍋で、塩に味噌に醤油味にと数種類のラーメンを混ぜて作ると、これがまた何とも言えない味になる。アウトドア風味のミクストラーメンって感じかなあ。でも念のため言っとくけど、自宅でこれ作って食べてもきっとうまくないと思うよ。

何てえのか、キャンプの最大の魅力はやっぱり“火”との触れ合いじゃないのかな。つまり、普段わしらが便利に使っておるガスや電気の火じゃなくてさ、薪などを燃やして起こす本物の火じゃ。飯を炊きながらあるいはキャンプファイアを囲んで、暗闇であかああかと燃える炎の姿を眺めていると、なんとなく人間って魅せられてしまうんだよね。古代人の心が甦るとでも言うのかな。その昔、プロメテウスから初めて火を与えられた頃の、人類の喜びがよ〜く分かるような気がするよ。だから心が安らぐんじゃろうな。そして静かに誰かと語り合ったり、一人もの思いに耽ったりしたくなるんじゃね。これぞ、一番のリラクセーション!
 な〜んてことを考えていたら、急にわしもキャンプに行きたくなったぞ。火を見つめながら、詩でも作りたくなったわい。ついでに俳句に短歌に川柳も詠んじゃおうかな。よ〜し、さっそくテントを準備すっか。なに、ホームレスと間違えられるからやめとけって? 大丈夫、わしのテントはそんなに立派じゃないから。