その84.黒い不死鳥の物語(2003.9.7)
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◆な〜んだかなあ、今月に入っても残暑が続くね。冷夏だったぶんだけ太平洋高気圧も不完全燃焼で、往生際が悪いのかなあ。寒さにゃ強いが暑さに弱い「ストーブの博物館」館長としては、早くスッキリと秋になって欲しいもんじゃよ。ボケた政治家もそうじゃが、何事も引き際が大事だって〜の。なに、わしの引き際? わしはまだまだ若いよ、バッテリーはビンビンだしさ。ホントだってば!
しかし、今年の冷夏で救われたのが関東地方の電力危機じゃな。なんたって、電力の4割以上を供給する新潟県・福島県の原子力発電所が、安全点検のため停止したんだもの。クーラー使用などで電力消費が急増する夏場は、供給不足で大停電が起きるなんてさんざん言われたもんじゃ。それがこの涼しい夏のお陰で、大助かり。電力需要は予想を大幅に下回り、無事に危機を回避できたというわけさ。停止していた原子力発電所も徐々に運転を再開したみたいだから、これでひと安心じゃね。冷夏さまさまだよ。
◆で、原発が停止している間に電力を供給していたのが、火力発電所や水力発電所。じゃが意外に知られてないのは、火力発電の中でも消費する燃料のトップは、石油ではなく石炭だってこと。驚いたかいキミも。今どきまだ石炭なの?って気もするが、これは事実なんじゃ。なんだか引退したはずのテリ−・ファンクに、後ろからパンチを食らったような感じだね。
もっとも、石炭が石油以上に使われるには、それなりの理由がある。まず、石炭は他のエネルギーに比べて、埋蔵量が豊富で安定した供給を受けられること。なんたってエネルギー源の確保は、国の安全保障に大きく関わっておる。特定の産油国に依存するしかない石油では、いつまた第二、第三の石油ショックが起きんとも限らんからね。その点、世界中で広く産出される石炭は、コストも安い上に安全性も高く、国を守るエネルギーとして優れておるんじゃ。それに日本では、燃焼技術の向上や排ガス処理技術などの進歩により、公害対策もバッチリ。石炭=黒煙というイメージは、過去のものなんじゃよ。ますます意外だね〜。
◆ただし、良いことばかりじゃあない。石炭や石油などの化石燃料を燃やすと二酸化炭素(CO2)が出るが、これが実に厄介者。CO2は温室効果ガスの一つでな、その影響により地球全体の平均気温を押し上げ、地球温暖化を引き起こす元凶なんじゃね。データによると19世紀末以降、地球全体の年平均気温が0.3〜0.6℃上昇し、海面は10〜25cm上昇しているというからただ事じゃないよ。氷河が解け出したらえらいこっちゃ。
思えばわしが子供の頃は、日本の石炭産業が花盛り。ミッチーこと三橋美智也の歌う、「俺ら炭坑夫」なんて歌がカッコ好くヒットしておった。そんな頃作られた東宝の特撮映画が「空の大怪獣・ラドン」。本多猪四郎監督のこの映画は九州の炭坑町が舞台じゃったが、まさに当時の花形である炭坑の様子を活写してたなあ。しかも、地底の奥深く眠っていた卵からラドンが目覚め、その餌となるメガヌロンが孵ったのも、原因は地球の温暖化。まるで現代の状況を見透かし、警鐘を鳴らしたような映画じゃったな。おお〜、ラドン恐るべし。しかしあのとき、地底の坑道から不気味な鳴き声を上げながらメガヌロンが現れた場面は、わし小便をちびるほど怖かったゾ。まあいま見れば、不格好なただのヤゴなんだけどさ。
◆そんな日本の石炭産業も今ではすっかり衰退し、炭坑やボタ山は姿を消してしまった。現在、日本の炭坑は北海道と九州に1つずつ残るだけというから、まるでトキみたいな存在じゃね。代わってわが国で使われているのが、オーストラリアなど海外から輸入された安い石炭。なにしろ向こうは露天掘りの大量生産じゃ。地中奥深く採掘する国内産では、コスト的に対抗できないというわけさ。これも一種の産業空洞化って奴かな。
じゃが、技術的・経済的に採掘可能な石炭の埋蔵量は、世界中で約1兆トンと言われておる。言ってみれば、無尽蔵って数字。しかも石油みたいに産出国が偏っていない。さらに、原子力などと比べてもはるかに安全だしさ。こう見てくると石炭って、意外にこれからも利用価値が高そうじゃね。地球温暖化や酸性雨、灰の処理なんかの問題はあるが、今後、クリーンに利用する技術が開発されれば、ふたたび石炭がもてはやされる時代がやって来るかも知れんよ。そうすればエネルギー問題の未来も明るい。世の中、一寸先のことは分からんもんね。だから、みんなも引退したお年寄りなんかは、大事にしとこうな。
てなわけで今回は久々に、「ストーブの博物館」館長に相応しい話をしちまったな。いかんいかん。
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