その90.はるかなる牛丼の呼び声(2004.3.9)
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◆なんだかなあ、ちょっと前に鯉ヘルペスってのが流行って話題になったと思ったら、次はアメリカでのBSE(牛海綿状脳症)感染牛騒ぎ、まごまごしてたら今度は鳥インフルエンザだもんなあ。怖い時代だよね、ホント。BSEのお陰でアメリカ産牛肉の輸入にストップがかかったわが国では、外食産業が大ショック。大手牛丼チェーンの吉野家なんか、中止した牛丼に代わるメニューとして期待していた、焼鳥丼もまた中止だというから可哀想。弱り目に祟り目とはこのことじゃな。
牛丼チェーンの各社は豚丼に命を懸けておるらしいが、これで今度は豚の伝染病でも発生したら、本当に食べるものが無くなっちまうね。な〜んか、世界各地から次々と出てくる新手の動物の伝染病を見てると、いま地球上に何が起きているのか、ちょっと心配になってくるよなあ。
◆もっとも、各チェーンが牛丼の販売を中止するのは仕方がないとして、日本の新聞・テレビがそれをあたかもこの世の終わりのように報道するのには笑ったね。それも、どの新聞・テレビもみ〜んな同じ。“最後の一杯”を食べようと駆け付けたサラリーマンを、どアップで映し出すテレビカメラもカメラじゃが、インタビューに対し「歴史的な日に立ち会えた気分です」なんて、答える方も答える方じゃ。そんな奴に限って、ふだんはイタ飯とかハンバーガーばかり食ってるもんさ。たしか10年ほど前の凶作による米不足のときも、米屋さんの前に行列が出来たりして大騒ぎになったが、あれだって並んだ奴に限って、ふだんはパンやパスタばかり食ってる連中だよきっと。
まあこれ、牛丼が絶滅するわけでもないし、食べないと禁断症状が出て死ぬわけでもない。いまは静かに、アメリカ産牛肉の輸入再開を待つしかないよ。なあに、もうしばらく我慢すればすぐに解禁になり、また元のようにうまい牛丼が食べられるようになるはずじゃ。たぶんそのときはまた日本中が、“復活の一杯”を食べようと駆け付ける連中と、それをこの世の始まりのように報道するマスコミとで、大騒ぎになるだろうて。うん、間違いない!
◆吉野家の牛丼といえば自慢じゃないが、わしも若い頃には随分お世話になったもんじゃ。何と言っても安くてうまいし、おまけに出てくるのが早い。大盛りを頼んで生卵をかけ、紅生姜をたっぷり乗せてワシワシかき込めば、気分はもう極楽。こいつにお新香なんかを付ければ、リッチな気分も味わえるしさ。いや〜、お金のない腹ペコ青年をつかの間、満腹感で包んでくれた牛丼は、まさにわしの青春の味って奴かなあ。
ところで、日本人が牛肉を常食として口にするようになったのは、明治の文明開化の頃じゃね。有名なのが牛鍋でな、これは牛肉とネギを平鍋に入れ醤油と砂糖で味付けしたもの。牛丼は、この残り汁をご飯にかけたところから生まれた、きわめて庶民的な食べ物じゃ。牛肉の旨味と噛み応えにネギの甘さと香り、それを優れた調味料である醤油と砂糖で甘辛く煮込んだ汁は、ご飯と一緒にかき込むともう絶妙のハーモニー。ここに紅生姜を配したところなんか、ノーベル賞を上げたいくらいの大発明だね。栄養のバランスも何となく良さそうだし、いくら食べても飽きが来ないし、牛丼は今や国民食といってもいいんじゃないかい。ちなみに吉野家によると、牛丼一杯(並)のカロリーは660kcalだから、そんなに高くはないんじゃと。
◆しかし肝心のBSEじゃが、日本でこんな騒ぎになってるというのに、当のアメリカ人たちは今でも平気で牛肉を食べてるという話じゃないか。まあ、病気が発見された牛がカナダ産だったので、自国産は大丈夫という確信があるのかな。だもんだから、日本では口に出来なくなった牛丼も、アメリカに行けば食べられるという、変な逆転現象がいま起きておる。吉野家のビーフボウル(牛丼)はアメリカ人にも大人気らしいから、なんだか嬉しいようなむかっ腹が立つような。日本の牛丼ファンは複雑な心境じゃね。
仮にこのまま、アメリカ産牛肉の輸入再開が延びるようなことがあれば、ひょっとするとビーフボウル・ツアーなんてのが組まれて、日本から大勢の牛丼ファンがアメリカに押し掛ける、なんてことになるかも知れんなあ。なんたってノリの軽いのが日本人だから、あながち冗談ともいえないのが怖いところじゃね。なに、その節はキミもぜひ参加したい? ふん、勝手に行くがいいじゃろう。その代わり、わしの分のテイクアウト三人前を忘れんようにな。
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