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その122.ああ、リンリンとランラン(2008.5.21)
最近、物忘れがヒドくなったと思ったらこの日記、もう一年近くも書いてなかったんだね。いかんいかん。どうも何か忘れているような気がしてはいたんじゃが、それが何だかまるで思い出せなくてね…。これってもしかして、すっかり老人力がついちまった、ということかな? ちなみに三度のおまんまだけはわし、なぜか絶対忘れないで毎日食っておるんじゃが。
 しかし、わしがロングバケーションをとっている間に、世間はいろいろと変動しておるなあ。期待していたサッカー日本代表のオシム監督がいつの間にか岡ちゃんに代わり、日本の首相も安倍さんから福田さんとかいう爺さんに代わっておる。なんだか日本全体がショボい方向に向かっているようじゃが、気がつけば近所のスーパーで売ってる味噌のパックも、値段は変わらないのに少しばかり容量が減っておる。原料となる大豆が高騰したためらしいが、庶民にとってはあまりにショボ過ぎて涙も出んわな。なに、上野動物園のパンダのリンリンが死にました? それがどうしたい。可哀想じゃが動物はいずれ死ぬもの、必要以上に扇情的な馬鹿騒ぎは必要ないよ。子供達のために代わりのパンダが欲しいと言うんなら、わしが着ぐるみでも着てやるさ。その代わり、ショボい日当なら受け取らんけどな。

そういやパンダで思い出すのは、もうかれこれ30年ほど前のこと。あれは昭和54年9月3日の残暑の中じゃったなあ。わが敬愛する落語家、六代目三遊亭円生師匠が突然亡くなってな、わしはガックリきたのを覚えておるよ。なんたってこの人の頭の中には人情噺から滑稽噺に怪談噺まで、無尽蔵ともいえるほど面白い噺がワンサカ詰まっておった。しかも、その練り上げた語りの巧いこと。端正で口跡が良くて、それでいてとぼけた味わいがあって面白くて…。師匠にかかれば、古典落語はそのまま小さなドラマじゃったね。それらがこの人の死とともに一瞬にして消え去ったわけだから、こりゃ間違いなく国民的大損失だと思ったもんじゃ。
 ところが翌日の新聞を見て、わしは腰を抜かしたね。なんとどの新聞もトップニュースは、同じ日に死んだ上野動物園のパンダ、ランランの記事で埋め尽くされておったのじゃから。そりゃあないよな。いくらパンダが、日中国交回復の記念として中国から贈られた希少動物だとはいえ、所詮はケダモノ。本来なら人間国宝にも認定されるべき、落語界の大師匠の死を差し置いて、トップ扱いとは解せん話じゃ。結局、ランランの死が一面だったのに対し、円生師匠の死は三面記事。パンダはまた中国から貰えば良いが、師匠はもう二度と帰って来ないのに、とあのときほど新聞に対して憤慨したことはなかったなあ。

現にランランの死後、すぐに中国からホアンホアンが代わりとして贈られた。それみろやっぱりと思ったものじゃが、考えてみりゃあパンダも政治の道具にうまいこと利用されてるわけだから、可哀想といえば可哀想だよな。その昔の戦国時代、政略結婚のため敵方に嫁がされたお姫様と同様、黙って故国のため耐え忍ぶしかない。もっともテレビなんかで見ると、そのわりには呑気にゴロゴロしながら、美味そうに竹なんか食ってるけどね。
 パンダ(ジャイアントパンダ)は、もともと中国の四川省や陝西省、甘粛省などの高山を主な生息地とする希少なクマ科の動物でな、竹林や森林をテリトリーにしておる。ほぼ竹や笹しか食べない偏食家なのはよく知られているが、800万年前のご先祖様はれっきとした肉食獣だったというから、あの可愛い顔からはどうも想像がつかんわな。この血を受け継ぐパンダじゃが、なんと今でも腸の長さは肉食獣のままだといい、消化器官内の微生物も肉類を分解するタイプなんじゃとさ。おかげでせっせと食べた竹や笹も20%しか消化吸収できず、恐ろしく燃費の悪いポンコツ車みたいに、常にエサを食い続けなければならんというわけ。つまり、体は肉食獣のまま食い物だけは竹が好きになってしまった、不器用なクマがこのパンダということになるな。変な奴じゃろう。まあ、極寒の地で苦労してエサとなる動物を探すより、身近にあり冬でも枯れない竹類をわんさか食う方が、まだましだとでも思ったんじゃろうかの。キミなら生き残るため、どっちを選ぶ?

しかしこんな偏食のおかげか、パンダの生息数は激減の一途をたどっておる。やはり消化不良による栄養不足が、この動物の持つ宿命的欠陥なんじゃろうね。そりゃあ人間だって他のものを一切食べず、コンニャクばっかり食べてたら体を壊しちまうもんなあ。今ではかの地に生息する野生パンダの数は、約1600頭(2004年)だとか。正真正銘の絶滅危惧種じゃが、かといって今さら奴らに肉を無理やり食わせても、こりゃ食うはずもないよな。通って来た800万年の道のりは、あまりに長過ぎる。
 こうして滅び行く希少動物のパンダに人間が出来るのは、せめてその生息環境を守ってやることくらい。可愛いからといって捕獲して、動物園で見せ物にしたり人工繁殖を試みたりしても、それは決して奴らを本質的に救うことにはならんわな。竹林の珍獣は、やはり竹林で死ぬのが相応しいはず。まあ、リンリン亡き後の上野動物園も、もう客寄せパンダを無理に中国から贈ってもらったりしないで、生息地の環境保全にでも協力する方が、ずっと良いんじゃないのかい。むろん、わしも上野動物園のパンダなど見たことはない。その代わり上野駅のでかいパンダの縫いぐるみの前で、友人と待ち合わせをして、その後、一杯飲みに行ったことは何度もあるけどな。





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 その121 売り売り帰る、瓜売りの声(2007.8.29)
 その120 2007年サッカー合戦図屏風(2007.5.22)
 その119 桜の下の不思議な世界(2007.4.9)
 その118 どこに消えた、ドラゴンのゴール?(2007.3.9)
 その117 お屠蘇気分で見た映画(2007.1.17)
 その116 さらば、哀愁の原爆頭突き(2006.11.14)
 その115 この夏、いちばん騒々しい海 (2006.8.30)
 その114 人生とは旅である、なんちゃって(2006.7.25)
 その113 ジーコ・ジャパン、墜落の原因は(2006.6.25)
 その112 日本が永遠に野球の国なわけ2006.5.6)
 その111 テレビドラマに心は躍る(2006.3.29)
 その110 春の歌は永遠に流れる(2006.2.23)
 その109 男の涙は見たくない(2006.1.14)
 その108 スペクタクルな男たち(2005.12.7)
 その107 頑張れ、プロレス!(2005.11.7)
 その106 目にはさやかに見えねども、秋だなあ(2005.10.4)
 その105 笑って許せぬにしひがし(2005.9.2)
 その104 暑い日は「冷や汁」に限ります(2005.8.1)
 その103 人生いろいろ、日本一もいろいろだ!(2005.6.3)
 その102 花粉は今日も舞っている(2005.3.26)
 その101 ほんとは怖〜い大黒様(2005.2.15)
 その100 世界に羽ばたく“ウルティモ・サムライ”(2005.1.13)
 その99 永遠の悪役、その人の名は…(2004.12.11)
 その98 柿食えば長い歴史の味がする(2004.11.10)
 その97 「台風」はどこからやって来た?(2004.10.12)
 その96 アテネで感動したこと、しなかったこと(2004.9.10)
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 その93 聖火燃える日、人も熱く燃える(2004.6.10)
 その92 ああ、ツバメは永遠に大空を飛ぶ(2004.5.10)
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 その90 はるかなる牛丼の呼び声(2004.3.9)
 その89 ベストフィットな二人の関係(2004.2.10)
 その88 「ラスト サムライ」はやっぱり変!(2004.1.9)
 その87 アイリッシュ魂が感動を呼ぶ(2003.12.8)
 その86 日本人は真田幸村が大好き!(2003.11.9)
 その85 人類の長〜い歴史のたまもの(2003.10.8)
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 その83 キャンプファイアはなぜ美しい?(2003.8.7)
 その82 ジーコ・ジャパンにもの申す!(2003.6.25)
 その81 君知るや、はるか西方の友(2003.5.28)
 その80 春の電車の風の匂いは(2003.4.28)
 その79 “MUSASHI”は永遠の若者像(2003.3.31)
 その78 タローの意見(2003.2.27)
 その77 流氷ロマン 北の海の物語(2003.1.29)
 その76 2003年の楽しみはこの二人(2002.12.29)
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 その74 オリジナルへの不思議な旅(2002.10.30)
 その73 名曲は時代と世代を超えて流れる(2002.9.29)
 その72 「まんがの日」は「文化の日」(2002.8.29)
 その71 キーワードは“ハングリー精神”(2002.7.27)
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 その66 おっとり刀で調べてみれば(2002.3.29)
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 その40 この広い野原いっぱい、ヨモギ(2001.3.15)
 その39 二人を結ぶ見えない糸は(2001.3.1)
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 その34 ボーナスはお早めに・・・へ!?(2000.12.11)
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 その31 天高く、富士山も高く(2000.10.28)
 その30 大相撲の人気停滞は誰のせい?(2000.10.11)
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 その27 夏の夜空に花が咲く(2000.8.28)
 その26 江戸時代なら一匹七両!(2000.8.11)
 その25 ひと汗かいて暑さすっきり(2000.7.25)
 その24 サメた眼をした南の海の凄い奴(2000.7.11)
 その23 お尻の光は初夏の色(2000.6.27)
 その22 1万年前から愛用してます(2000.6.12)
 その21 ゴジラの心は深い海(2000.5.26)
 その20 おぼろ月夜に、ワオーーーン!(2000.5.11)
 その19 春は、花よりダンゴ鼻(2000.4.25)
 その18 花のお江戸のリサイクル(2000.4.12)
 その17 春だ、野球だ、日本人だーっ(2000.3.30)
 その16 ゾウさん、ゾウもすみません(2000.3.22)
 その15 小鳥はとっても歌が好き(2000.3.1)
 その14 ちょっと一息、目も一息(2000.2.23)
 その13 二番目は日本語だった(2000.2.16)
 その12 仮面のヒーローはいま?(2000.2.9)
 その11 石炭にサヨナラを言わないで(2000.2.2)
 その10 冬の日の想い出、それは石炭ストーブ(2000.1.26)
 その9 雪が降り、炭火について考えた(2000.1.19)
 その8 遅くなりましたが、新成人諸君おめでとう(2000.1.12)
 その7 2000年が良い年でありますように(2000.1.1)
 その6 今年も残り少なくなりましたな!!!(1999.12.22)
 その5 「かさこ地蔵」が殖えている!!!(1999.12.15)
 その4 冬も元気いっぱいプラタナスの謎(1999.12.8)
 その3 シャコバサボテンを慰めよう(1999.12.1)
 その2 赤トンボの謎(1999.11.24)
 その1 七五三うんちく話(1999.11.17)